正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第2回

     - 統合医療

前回、統合医療とは「治癒指向で全人的(body, mind, spirit)視点を持つ西洋医学と代替医療のあらゆる適切な療法の活用である」とするWeil博士の定義をご紹介しました。そして全人的な治療をめざすためには体と共に心が癒されることが大事であるという私どものクリニックコンセプトも併せて述べました。

体と共に心が癒される統合医療実現のためには、ではどうしたらよいのでしょうか?ここではがんの治療を例にとって私どものクリニックで行われている治療法をご紹介しましょう。現代日本人の発がんにはストレスと不適切な食事が深く関与していると私は考えています。強いストレスに曝されていると自律神経のうち交感神経が高まり、白血球のひとつである顆粒球が増えます。顆粒球は活性酸素を産生するので、過剰に産生された活性酸素が正常細胞を傷つけ、その結果発がんが起こると考えられます。交感神経の過緊張とは、例えて言えば車のアクセルを踏みっぱなしの状態です。これに対してもう一方の自律神経である副交感神経は、体や心が安らいでいるときに働く神経です。これら交感神経と副交感神経のバランスを取ることで、心は安定を取り戻し、体にはよけいなストレスがかからなくなります。

副交感神経を高めるために私どものクリニックで行っている治療法に郭林新気功があります。2回息を吸ったあとに1回息を吐きながら歩くという非常にシンプルな気功です。この気功の前後で患者さんにお願いして体温と脈拍を測定したことがあります。驚いたことに気功の後では体温が上昇し、脈拍はゆっくりとなるのです。郭林新気功のあとにはヨガマットの上で横たわっていただき必ず20分の休息時間をとるのですが、たいていの方は気持ちが良くなって寝てしまわれます。これらは副交感神経が高まっていることの何よりの証拠です。そして同時に心が緩やかに解放されているといっていいでしょう。つまり、体と共に心も癒されているのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」296号(2010年8月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士