正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第3回

     - 統合医療

前回はがん患者さんの治療に関して、郭林新気功を例にとって副交感神経を高めることが体と共に心が癒されるために必要である事をお話ししました。がんという重い病気をあえて取り上げたのは、がん治療が統合医療を説明するのに最適なモデルであると私が考えているからです。

ここから先もやはりがん患者さんの治療を例に挙げて、もう少し統合医療とはどういうものかお話を進めましょう。私どものクリニックではがん治療の一環としてゲルソン療法という食事療法も取り入れています。ゲルソン療法の基本は四つ足動物を食べない、可能な限り塩分をとらない(1日2gぐらい)、そして大量のフレッシュな野菜・果物ジュースを飲むことです。これらにはいづれも理論的な根拠があります。四つ足動物、即ち動物性タンパク質は大量に食べると小腸で分解されずに大腸にまで達し、ここでウェルシュ菌のような悪玉腸内細菌によってインドールやアミンといったがん原性の物質に変化します。塩分の取りすぎは人間がエネルギーとして使用するATPを産生するクエン酸回路がうまく回らなくなりATPが不足する結果、がんが発生しやすくなります。そして野菜・果物ジュースには抗がん作用のある抗酸化物質であるポリフェノール、フラボノイド、カロテノイド、ビタミンC、クロロフィル、葉酸などが豊富に含まれています。つまり、食事は人間が生存していく上で極めて重要なものなのです。

私どものクリニックで統合医療を実践されている方が先日憤慨して申されるには、「以前入院していた病院の看護師に、がんになったらどんなものを食べたらいいのか尋ねたところ、好きなものを何でも食べて良いわよ」と言われたそうです。これなどは通常の病院の医療従事者が食事療法に対して全くの無知である証明のようなお話ですが、これではがんは体から消えていきません。ここでも通常の病院のがん治療が西洋医学的三大治療(手術、放射線、抗がん剤)以外のものには全く目を向けていないことがよくわかります。これに対して統合医療では食事療法も重要ながん治療法と捉え、実践していくのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」297号(2010年9月6日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士