正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第13回

     - 統合医療

(前回からの続き)

④,さまざまな治療法を選択・統合し、もっとも適切な方法を行う
統合医療やホリスティック医学では自然治癒力を高めるため種々の補完代替療法を取り入れることが多くなります。しかし、ここで気をつけなければならないのは、統合医療は決して西洋医学的治療を排除しているのではないことです。西洋医学的治療は特に急性期の治療としてはすばらしいものがあります。たとえば腸閉塞に対する手術、あるいは肺炎に対する抗生物質投与など、西洋医学で助かる病気は枚挙に暇がありません。しかし、進行がんに対する治療や、なんとなく体がだるいといった不定愁訴に対して西洋医学だけでは必ずしも治療効果をあげられない場合があります。このような時に適切な補完代替療法の選択が重要となるでしょう。治療穂の選択・統合というとなにやら難しく思われるかもしれませんが、要は治療を「いいとこ取り」でおこなえばいいのです。

⑤,病の深い意味に気づき、自己実現をめざす
多くの慢性疾患は、患者の生活習慣やストレスなどが背景にあります。この背景を考えることなく、単に薬をのむといった対症療法に終始していては真の治癒は得られないでしょう。
私は多くの慢性疾患は何らかのアラームサインであると考えています。例えばがんの発生は不適切な食事や過度のストレス、働きすぎなどで起こってきます。これは体が、「もうこれ以上、自分の体に無理をかけないで下さい」といっているのではないでしょうか。このような体の声に耳を傾けることがすなわち病の深い意味に気づくということだと思うのです。私のクリニックでがん統合医療を実践されている患者さんが、あるときこうおっしゃいました。「先生、わたしがんになって良かった。がんになったことで、毎日生きられることがどんなにすばらしいことであるかわかったし、そうやって生きることがいろいろな人に支えられてはじめてできるのだということもわかりました。がんになる前はつまらないことでいらいらしたり不平不満ばかり言ったりしていたけど、今は毎日周囲の人に感謝して生きています」と。この方は以前かかっていた病院で手術、放射線、抗がん剤をおこなっていましたが、がんの進行をとめることができずに私のクリニックにいらした方です。現在は抗がん剤を使っていませんが、がんは残存しているもののそれ以上に進行することなくお元気で通院されています。この方はがんになってそのなった意味に気づき、そして人生をより良く、そしてより深く生きることができるようになったといえましょう。

以上、ホリスティック医学に準拠しながら、統合医療を別の角度から再定義してみました。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」309号(2011年9月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士