正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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仕事と遊びの連続性-大人にとって

ひたすら遊び、楽しんできた子どももいずれ大人の社会に入ります。大人の期間は、ライフサイクルの中で最も長いものです。大人にとっての「遊び」とはなんでしょう。みなさんは「遊び」と言われて何を思いますか。

かっての社会的秩序が比較的はっきりしていた時代、一世代二世代前に比べると、生き方の多様化や主体的に自分の人生を選びとる可能性が増大したことは、自己実現の機会が増え、その幅が広がったといえます。特に女性が職業を持つことが一般的となっている現状は、女性の生き方や価値観を決定する上で、大きな影響を与えています。また、女性だけでなく、男性にも影響を及ぼしています。シングルライフ、晩婚、核家族化、離婚、再婚など、多様な変化を見せています。しかし、ライフサイクルからみた大人の課題は、仕事、結婚、家庭、育児と自分のライフスタイルを持ち、人格の完成、家庭や社会における安定が確立されることにあるといえます。より自分らしい生き方と家庭や社会との安定の間で大きな葛藤と矛盾を抱えることになります。

大人にとっての遊びは余暇として位置づけられます。余暇は1日のうち、睡眠や食事など、人が生活で消費したエネルギーを補給し、疲れをとる生理的再生産の時間、あるいは家事や学業を含む仕事の時間以外をいいます。余暇は「気晴らしや」や「休息」、「娯楽」など、仕事・労働との対比で語られます。日常は、経済的基盤を支える仕事が大半を占め、わずかな遊び・余暇は、生活のゆとりやうるおいを生む活動というより、仕事にともなう心身の疲労により傷つき失われかける人間性の回復に、その多くのを費やされることに代わっているかもしれません。

本来の遊び・余暇、休養・熟成の時間をとり戻すことで、真の人格の成熟、家庭や社会における安定が確立されるといえます。ゆとりある生活を送りたいものです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」165号(1999年9月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。