病気とにおい
- 鍼灸治療
4月24日の読売新聞の夕刊に、がん特有のにおいを嗅ぎ分ける訓練を受けた「がん探知犬」の記事が報じられていました。尿1mlの入った試験管を木箱に入れその前を研究者に連れられて歩き、がんのにおいを感じたときには箱の前で座り、それ以外は通り過ぎるように訓練されているのだそうです。子宮頸がんや卵巣がんなど5種類の婦人科のがん患者43人の尿ではすべてがんと判定。大腸がんでは呼気を使い9割以上の精度で嗅ぎ分けられたそうです。
この記事を読んで「うーん、なるほど」とうなってしまいました。
約3000年前に端を発する東洋医学では治療を始めるまえに、問診(もんしん)・望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・切診(せっしん)という手法で診察をします。MRIもレントゲンも血液検査も尿検査もなかった遠い昔に治療者は五官を駆使して不調を訴える方の顔色を見て、声音を聞き、体臭、口臭、を聞き、体に触れて診察し治療方針を立てたのです。“聞診”というのがまさに嗅覚と聴覚で診察を進めていく方法なのです。聞診では臊・焦・香・腥・腐のにおいを嗅ぎ分け、五臓六腑のどこに病いが起きているか見当をつけることができると言われています。
犬の嗅細胞は2億5千万個~30億個、ヒトは約500万個と、たちうちできるものではありませんが遠い昔の先人たちのように私もより五官を研ぎ澄まして来院される皆様に接してゆかなければと思った次第です。
ちなみにこのワンちゃんはラブラドールリトリーバーのメスで“マリーン”という名前です。この研究は6月と9月の日本乳癌学会と日本癌学会で発表予定です。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」317号(2012年5月7日発行)に掲載された記事です。
著者 ●鍼灸師 |
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