ハマボウフウ
ハマボウフウは砂浜に見られるセリ科の宿根草で、砂の中深く、真直ぐに根を伸ばしています。芽は冬の間は砂の中に埋まっていて、春になると葉を出し、茎を伸ばして花を咲かせ、実を結びます。秋になると地上部が枯れ、冬に備えます。
宮崎安貞の『農業全書・元禄十年(一六九七)』によると「・・茎を取りてわりて膾の具に用ひ、或は酢にひたして食ふ。甚だ其香よく味よし」とあります。昔から、けっこう需要のあったことがうかがえます。
ハマボウフウは日本の各地の海岸砂地に野生しています。北海道の海岸にはまだまだたくさんあるので本州のように栽培する必要はないだろうと思っていましたが、最近では石狩海岸などでも文字どおり「根こそぎ」にする人が増えて、ハマボウフウは危機に瀕しているそうです。
去年、苫小牧の千葉先生ご夫妻から「オカノリとハマボウフウ」の種子をいただき播いて見ました。オカノリは、ほどよく生長したのでおひたしにして美味しくいただきました。ハマボウフウは子供の頃、浜辺でよく見かけていた野生のものですと、わずかに黄色味をおびた若葉を摘んだだけでも、ハマボウフウの移り香で手が匂ったものですが、栽培ものは、少し違うようです。
漢方薬にするボウフウは、同じセリ科ですが、食用のものとちがって、属のちがう三年草が使われていたものです。最近は薬用種も食用種も栽培されるようになりましたので、もともと同科、同系統の植物だから用途も共通するところがある、ということで両方ともハマボウフウと呼んで区別していないようです。
漢方薬として利用するのは、根を乾燥したもので、これを煎服すると、感冒や頭痛などに効目があるところから、「防風」という名がつけられました。風から砂丘を守るのも、風邪に効果があるのも、ともに防風です。
風強し
防風摘まんと
浜に出る 高浜虚子
(日高 一)
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」244号(2006年4月5日発行)に掲載された記事です。
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