正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第19回

     - 統合医療

(前回からの続き)
炭水化物は太るから食べない
肥満で悩んでいる方々のなかには、ご飯や麺類などのいわゆる炭水化物を一切取らないという人が時々いらっしゃいます。
特に若い女性で多いのですが、ダイエットのため炭水化物は食べないで野菜ばかり食べている人もいらっしゃいます。
おそらくこれはロバート・アトキンスが提唱した低糖質ダイエットが影響しているものと思われます。
低糖質ダイエットとは摂取する糖分を20~40gと極端に制限し(通常は200~300gです)、糖分のかわりに脂肪をエネルギーとして使用するダイエットです。
脂肪が燃焼することで皮下脂肪が減るというイメージが一人歩きしているのかもしれません。確かに血糖値が上昇すると膵臓から分泌されるインスリン量が増加し、
血糖を脂肪に変えて体内に貯蔵するので、この理論はあながち間違いとはいえません。
しかし、炭水化物で血糖値が急激に上昇するのは、おもに精白した小麦から作るパンやパスタ、白米、白砂糖などの精製炭水化物です。
これら精製炭水化物はミネラル、ビタミンがほとんど残留していないので体内でうまく利用できずに、血糖値が急激に上昇するのです。

一方、未精製の炭水化物である玄米や全粒小麦粉で作ったパンなどにはマグネシウム、亜鉛、クロムなどのミネラル、ビタミンB群、食物繊維などがふくまれています。
このためこれらの炭水化物は体内での代謝がスムーズです。
同時に穀類や豆、イモなどの複合炭水化物は白砂糖などと異なり分解吸収にかかる時間が長いので血糖値の上昇も緩やかになるため、インスリン分泌も少なくなります。
つまり、これらの未精製炭水化物をとっていれば肥満を気にする必要はないのです。
以上より、炭水化物で肥満を誘発するかどうかは血糖値の上昇速度が関与していることがわかります。
血糖値の上昇速度が速いと血糖は脂肪として体内に蓄えられやすくなるのです。ここで重要なのが、グリセミック指数(GI)です。
GIとは炭水化物を含んだ食物による血糖値の上昇速度を、ブドウ糖を100として相対的な数値としてあらわしたものです。
GI値が高いほど血糖の上昇速度は速く、低いほど遅くなります。いうまでもなく、GI値が高い食品ほど肥満を誘発します。
(この項、次回に続く)


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」319号(2012年7月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士