「ヨーガとは心作用の止滅である」(またまた続き)
- インド哲学
『ヨーガ・スートラ』第一章第二偈(1・2と記す)の「ヨーガとは心作用の止滅である」について、しつこいと言われるかもしれませんが、もう少し説明してみたいと思います。なぜなら、この一文が『ヨーガ・スートラ』の核心だからなのです。
つまり、この一文が述べている境地を達成できたなら、ヨーガは完成したと言えるのです。
実際、わたしは『ヨーガ・スートラ』のこの一文を読んで驚愕しました。こんな大事な文が、こんなに最初に説かれているなんて、なんておかしな本なのだろうと思ったのです。ふつうの場合、こんな大事な核心は本の最後の方に置かれるでしょう。もったいぶって大事なことは最後の方にもってこないと、皆さん、本を読んでくれないでしょう。作者のパタンジャリ氏は、なんて太っ腹なんでしょう。本当に『ヨーガ・スートラ』を読んでもらいたいのかしらと思ったのです。
しかし、この一文、よく考えるとそんなに簡単なことが書かれているわけではありません。
そもそも心の作用を止滅する(ニローダ)ことなんて、出来るのでしょうか。ただ思ったり、考えたり、感じたりしないようにする、なんてことではないのです。きっと、ぐっすり寝ているときは、心の作用はないかもしれないな、と思ったあなた。あまいです!
『ヨーガ・スートラ』1・10に「眠り」を定義して、「無の観念を対象とする(心の)作用が眠りである」と言われるからです。眠っているときも、心の作用はあるんですよ、と言っています。ここで、気づいたでしょう。実践の書『ヨーガ・スートラ』は、誰でも読める簡単なことを書いた本じゃないんだ、ってね。
こうして、どんなことが書いてあるのか知りたくなったあなたは、読んで実践して行くしかないことを知るのです。本の冒頭に答えが書いてある本なんて誰が読むの、と思ったわたしがバカだった。本当にヨーガの意味を知りたいなら、読んで、書いてあるとおりにやってみるしかないことを知るのです。こういうわけで、わたしたちは『ヨーガ・スートラ』を読んでいくことになるのです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」481号(2026年1月5日発行)に掲載された記事です。
![]() |
著者 |
|
略歴 ヨガライフスクールインサッポロ講師、北星学園大学、武蔵女子短期大学、その他多数の大学、専門学校にて非常勤講師として教鞭をとる。著書に『インド新論理学派の知識論―「マニカナ」の和訳と註解』(宮元啓一氏との共著、山喜房佛書林)、『ビックリ!インド人の頭の中―超論理思考を読む』(宮元啓一氏との共著、講談社)、『ブッダ論理学五つの難問』(講談社選書メチエ)、『龍樹造「方便心論」の研究』(山喜房佛書林)、『ブッダと龍樹の論理学―縁起と中道』(サンガ)、『ブッダの優しい論理学―縁起で学ぶ上手なコミュニケーション法』(サンガ新書)、『龍樹と、語れ!―「方便心論」の言語戦略』(大法輪閣)、『龍樹―あるように見えても「空」という』(佼成出版)がある。 |
|
