正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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生涯学習

前回に続いて、お年寄りの話を聞いていて気がつくことをもうひとつ。それは学ぶことの重要さです。子どもの頃の話、若い頃の話、今の話を聞いても必ず出てくるのが「経済的なこと」と「学習・勉強」の二点です。たとえば、「裕福だったので好きな勉強をさせてもらった」、「好きなことができたのですが、勉強はきらいでねえ・・・」、「貧乏だったので、満足に学校へ行けませんでした」、「何とか学校には行かせてもらいました」というような具合です。大人になってから、現在を語るときも「学習」「勉強」はキーワードとして話を展開する人が多いです。私たちは、学ぶことを大切にしている文化の中で生きているようです。

時代は生涯学習を進めています。確かに勤務先にある放送大学の学習センターは、にぎわっています。老年期に入って、向学心を持てることはすばらしいと思います。

生涯学習とは、学校において行われる学習だけに限るものではなく、地域・社会で行われる学習をも含んだ広い概念です。学習を通じて「生活の向上」を目指すことが、生涯学習の基本理念となります。

老年期にある人たちの生活向上を考えると、自己選択や自己決定ができるように、それを通して自らの人生を主体的に生きていく、QOLを追求していくことと理解することができます。これを考える前提に、老化や病気による生活の弱化と予防の視点があります。とすると、老年期の学習は、高齢者ひとり一人の自立した生活の能力を自己開発していく営みともいえます。

これからの時代、自己決定が重要になってくるようです。学習のプロセスを通して、自分の学習は自分で決定していく。学習の主体性は、学習そのものの効果を高めるだけではなく、学習の結果を生活に活かしていく技の向上につながるのでしょう。老年期だけの課題とは言えないようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」259号(2007年7月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。