正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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睡眠時間は大切、寝ない子は太る

「よく眠る」、そうしないと太りやすくなる、という話を聞いたことはありませんか。これまでの研究で、慢性的な睡眠不足が肥満をもたらすということがわかっていました。しかし、睡眠時間がヒトのエネルギー代謝にどういった影響を及ぼすのか、その詳しいしくみは明らかにされていませんでした。

早稲田大学と花王株式会社との共同研究により、エネルギー消費量の点から睡眠時間と肥満の関係が明らかになりました。人の睡眠時間を大幅に制限すると、食欲を抑制するホルモンが減少するため空腹感が増すという影響を及ぼし、その結果、肥満になる危険性が高まるということです。

この研究グループは健康な若い男性9人を対象にしています。睡眠時間を7時間3日間続けた場合と、睡眠時間を半分の3.5時間に制限し3日間続けた場合でのエネルギー代謝や食欲の変化を観察しています。

エネルギー代謝では、睡眠時間を7時間から半分にすると、夜間のエネルギー消費量は増加します。ですが、1日のエネルギー消費量には変化がなかったそうです。また、睡眠時間を制限すると、食欲抑制作用をもつホルモンの分泌が有意に低下し、さらに空腹感が増すという結果だったそう。加えて、直腸で測定した深部体温も明らかに低下していたようです。つまり、睡眠時間をとらないからといって、1日のエネルギー消費量は変わらない。けれど。食欲は増し空腹感を常に持つことになる。体温も低下するので、エネルギー代謝は一層下がる、ということです。

よく寝るほうが太らないのは正しいことでした。起きているから、つい甘いものを食べてしまう、という単純なものではないようです。夜遅くにこってりラーメンを食べたくなるのは、これで説明がつきます。意志が弱いのではなく、ホルモンが正常に働かないため。睡眠時間を少し意識するだけでも違ってくるかもしれません。

ホルモンを正常に戻すには、少し長めの睡眠10時間程度を2日とると良いようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」375号(2017年3月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。