正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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見えることと聞こえること

見えにくくなった、聞こえにくくなったところから、年を取ったと感じることは少なくないと思います。

実際には、視力は若い時期から加齢とともに低下しています。もちろん、人によって差はありますが、視力は70代で0・4程度、80代では0・2~0・3程度になるといわれています。この視力低下によって、時刻表や運賃表など見えにくくなりますし、多くの情報の入った掲示板などでは判断が遅れることが出てきます。また、明るいところから暗いところに移動すると、眼の順応が追い付かないことがあります。明暗の激しいところを移動すると疲れやすくもなります。

聴覚機能では、高い音が聞き取りにくくなり、小さな音が聞こえにくくなるなど、聞こえる範囲が狭くなります。そのため、言葉を通してのコミュニケーションが困難になったり、音で危険を察知したりすることが遅れます。さらには、洗濯機や炊飯器、ガス漏れ検知器や火災報知機など家電製品の音は4、000Hzの高い周波数の音が多く使われていますが、これらの音は高齢者にとっては聞き取りにくいものになります。また、似通った音の設定では、どの製品の音が鳴ったのか区別しにくく、音源を見つけることができないなど、混乱をきたす可能性があります。

感覚機能の低下は日常生活への影響となります。そのため、予防や安全確保を考える必要が出てきます。

たとえば、聴覚の機能が低下してることから、コミュニケーションが困難になるだけでなく、会話しようとする意欲が減退する場合も出てきます。そんなときは、できるだけ会話できる環境に置き、聴覚機能の中枢の老化を防ぐことが必要と思います。

気になる認知症は視覚・聴覚の両障害のある人に多くみられ、この二重の感覚障害が加わると死亡率が高いことが示されています。メガネや補聴器を合わせること、そして何よりも人の中に入ることで、感覚を使うことが衰えの防止になります。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」380号(2017年8月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。