正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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健康寿命

7月に厚生労働省が報告された平均寿命、男性は80・98歳、女性は87・14歳と過去最高のものでした。平均寿命は0歳の平均余命です。つまり、0歳児が、平均して何年生きられるかを示すものです。なので、60歳の人がこのあと20・98年生きられる、というものではありません。各年齢での平均余命は、別に簡易生命表が出されていますので、それを確認する必要があります。たとえば、平成28年の簡易生命表を見ますと、60歳の人の平均余命は男性23・67、女性は28・77年となっています。そうすると、平均寿命より長いことがわかります。

どちらにしても、平均寿命も余命も毎年延びています。なので、人生60年の時代は遠い昔。人生80年、90年で考えていく必要があります。ところが、問題は平均寿命が延びているのに、健康寿命との差がひらいているところにあります。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。健康寿命も延びていますが、平均寿命もしくは余命の延びに追いついていません。最新で公開されている健康寿命でみると、男性が72・14歳、女性が74・79歳です。ということは、ぽっくり死ぬことはほぼない、わけです。

老後の不安の原因はここにあると思います。もちろん、長生きすることが幸せではないことも、体が丈夫であればよいということではないことを、私たちは知っています。だからこそ、不安への対処には考えるべきことが何かあるような気がします。食事や運動、睡眠で健康寿命を縮めない努力はしますが、それだけではないと思うのです。楽しく生きる、納得の生活は何かを考えてはいかがでしょう。

私たちは「生活は楽しい」を忘れてしまった気がします。自然災害が続き、生活と経済状況が結び付き、節制や節約、自粛という言葉が困難を乗り切る手段となった時がありました。「生活は楽しい」ということを思い出すことから始めると、これからどう生きるか見つかるような気がします。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」381号(2017年9月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。