正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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うさぎ・月・宇宙

     - 鍼灸治療

子供の頃、十五夜さんの飾りつけをしながら祖母がお月さんではうさぎがお餅をついているんだよ、と話してくれました。たしかに、月の白っぽいところと黒っぽいところがうさぎが餅をついているシルエットに見えました。日本の子供たちが一回は耳にしているこのお話はインドの仏教説話集「ジャータカ」に収められているお話が起源となっています。そして日本では平安時代末期に成立した説話集「今昔物語」に取り入れられ、三獣行菩薩道兎焼身語の説話となり私たちに、おおむね次のように伝わっています。

昔々うさぎとさるときつねが「自分たちが獣の姿なのは何故だろう?」「前世で何か悪いことをしたのではないだろうか?」「せめて今からは人の役に立つことをしよう!」と話し合っていました。それを聞いた帝釈天が老人の姿に変え3匹の前に現れます。お腹が空いて動けない老人が何か食べるものを恵んでくださいと3匹に頼みます。さるは果物を採ってきました。狐は魚を採ってきました。うさぎは何も食べ物を採って来ることができませんでした。うさぎは「私を食べてください」と焚き火に身を投げました。これを見た老人は帝釈天の姿に戻り「お前たちの気持ちはよくわかった。それにしてもうさぎにはかわいそうなことをした。月の中に永遠に姿を残してやろう。」というお話でした。

私自身も成長するにつれ、月は生物が住める環境ではなく、うさぎがいないということは当たり前となりました。けれど晴れ渡った夜空に浮かぶ満月にはいつも魅了されています。私にとってそんな情緒的でロマンティックだった月が1969年7月20日、アポロ11号が月面着陸し人類が初めて月面に降り立ったことで現実的、科学的なものになりました。その後、アポロ計画では1972年に中止されるまで12人の人類が月面に降り立っています。そして、いま再び米航空宇宙局(NASA)は国際プロジェクトとして2025年以降に月面に人類を送り、その後ゲートウェイ(月周回有人拠点)計画などを通じて月面拠点を建設、月での人類の持続的な活動をめざすアルテミス計画が進んでいます。

子供のころからわくわくして観ていたSF映画やSF小説の世界がいよいよ現実のものとなる日もそんなに遠くないのかもしれません。そうなるとペットとしてうさぎが月に棲むようになるかもしれませんね。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」445号(2023年1月5日発行)に掲載された記事です。

著者
工藤由美子
F&E鍼灸院 院長

●鍼灸師
●不妊カウンセラー
●介護予防運動指導員
●ヨガライフ協会認定インストラクター
●アロマテラピーアドバイザー
●メディカルハーブコーデネーター

著者メッセージ
ヨガインストラクターを長く続けさせていただくうちに、身体の故障や不調にマンツーマンでアプローチできる方法を学びたいと思い、鍼灸師の資格を取得しました。体のしくみや病気の勉強をしていくうちに当ヨガ協会の教え「食・心・動」の大切さをあらためて実感しました。四季を感じ、無理をせず、無駄をせず、心たのしくヨガをしていきたいと思います。