ミョウガ
「植物のむかし話」に”茗荷の宿”というのがあります。
物覚えの悪い般特(はんどく)というお坊さんは、自分の名まえまで忘れてしまうので、
かわいそうに思ったお釈迦様が、名まえを書いた札を首にかけてやったところ、
その札のことまで忘れてしまった。般特が死んで葬られた墓からおかしな草が生えたので、
名まえを荷った般特にちなみ茗荷という名前がつけられたというお話です。
ミョウガを食べると物忘れしやすくなるという江戸時代の落語”茗荷の宿”は
今でも私たちを楽しませてくれますが、物忘れするというのは迷信です。
逆に近年の研究から、ミョウガを食べると
その香り成分が血流をよくして認知症の予防になるといわれています。
ミョウガは日本特有の香辛野菜で、原産は中国ですが、食用にするのはおもに日本だけです。
中国では食用としませんが、江西や浙江、黄州、四川などの山村に生えていて、
葉やミョウガを煎じたり、汁などを薬用としています(「中薬大辞典」)。
また、自生が人家の近くにしか見られないことから、
大昔中国から入ってきたのではないかともいわれます(「農文協・野菜は薬だ」)。
ミョウガは平安時代の「本草和名」に記載されていますが、
やがて漢名から茗荷に変わり、日本人好みの薬草でした。
江戸時代の農業書には「食料の助けにはならないが各家で必ず植えられている」と書かれています。
古くは和名を米加(めが)といい、「赤色ノ者ヲ佳ト為ス」とあります。
「延喜式」には天皇の食べ物としての栽培の記録があり、漬物にしたとされています。
花が咲くまえの、よく身がしまってふっくらと丸みのあるもの、
根元が赤みがかっていてつやのあるものがよい。香り成分はα-ピネン。
食欲を増進させる効果があり、夏の料理の薬味によい。血行をよくする効果があります。
民間療法では神経痛やリウマチの治療や消化促進に生を食べるとよいとされています。
根を煎じた汁は腎臓病や生理不順、しもやけに用いられてきました。
茗荷よりかしこそうなり
茗荷の子
子規
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」416号(2020年8月5日発行)に掲載された記事です。
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