正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

*

梅干し

     - クスリになる食べ物

立春が過ぎると寒気も少し和らいできますが、寒の戻りとか余寒という言葉もあるのがこの季節です。
新型コロナ禍だけではなく、インフルエンザにも油断はできません。

酸っぱいものというと、梅干しのほかにもレモンとかラッキョウ漬けなどがあります。
故同志社大学名誉教授の西岡一先生(平成26年没)によりますと、
これらのものを口の中に入れて、唾液の量と質を比較してみたところ、
梅干しの場合が、最も量が多く、質もすぐれていたそうです。
東洋医学では、唾液のことを「神液」、あるいは「清津(せいち)」と呼んでいますが、
その神秘的な力をいったものと思われます。

今日では、お花見といえば桜ですが、万葉の時代は梅の花に人気があったようです。
中国から渡来した梅は、「百花の魁」といわれ、春まだ浅いころに清楚で気品の高い白い花を咲かせ、
ほのかに甘い香りが芳しいので、日本人の郷愁をそそる木ともいえます。
わが国には樹木の梅より先に薬として烏梅(うばい~未熟な梅の実を燻製にして干したもの)が渡来しました。
『本草綱目』には、烏梅は解毒、健胃、去痰、鎮静作用があり、
口渇を抑えて頭や目の痛みを和らげると記されています。
江戸時代の『本朝食鑑』には、白梅花の煎湯で顔を洗うと肌がつややかなるとともに、
ほくろやニキビの類を取り去ると記載されています。
このほか梅核仁(種子)は日射病や夏バテなどの暑病を治療し、目を明らかにする解毒効果もあると伝承され、
今日でも梅肉エキスや梅酒も健康食品や健康酒として広く利用されています。

梅干しは、有機酸やビタミン、ミネラルが類を見ないほど豊富で、
強い酸味に殺菌・防腐効果があるため、食品の保存に用いられますが、
胃腸の働きを促しますので食欲増進や便秘、肌荒れにも効果があります。
昭和前期の人ですと「梅干し」と聞けば、まず、日の丸弁当を思い起こすはず。
戦前戦後の混乱期には弁当の中に、この赤い梅干し一つを埋め込んだご飯を食べながら、
苦難と欠乏に耐えてきました。この年代の人たちの食事の原点といえるかも知れません。

梅づけにむかしをしのぶ
真壺かな 
召 波

梅干し


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」422号(2021年2月5日発行)に掲載された記事です。

著者
福士 高光
株式会社ケルプ研究所 代表取締役会長

略歴
F・E・ヨガライフ協会会長。理学博士。F&Eシリーズ開発者。