クコ
ひと昔も前のこと。不老長寿、強壮、強請に役立つ百薬の長として、
日本中にクコブームが広がったことがあります。
一晩のうちに、生垣のクコをそっくり盗まれた農家があったり、
銀座の舗道には、クコの枝を並べて、いい加減高い値で売るものまで出現したものです。
しかし、強壮、強請の方は、期待したほどのことがなかったためか、
ブームはまもなくしぼんでしまいました。
婦人雑誌でクコの効用を宣伝したのがブームの引き金になったようですが、
それにしても日本人は飽きっぽい。クコのつぎにきた紅茶キノコのブームも、
これは効き目ゼロということも手伝って、あっという間に忘れ去られています。
「神農本草経」の中で、クコは上薬中の上位にランクされており、
中国では仙果といわれ、回春に特効ありとされてきたものです。
東京にもクコの実会というファンの集まりがあるそうですが、
作家の尾崎士郎も愛用していたそうです。
農村では昔から、薬用植物を家の周りに植える習慣がありましたが、
クコも茶の木やウコギなどと共に生垣にしたものです。
「和名抄」にも出ていますが奈良時代から薬草として植えられた記録もあります。
そして民間の常備煎薬となっていたものですが、鎌倉時代になって茶の普及が進むと、
いつの間にかクコの煎薬が締め出されてしまいました。
しかし、久米の仙人がクコを愛用して186歳の長寿を保ったとか、
仙人が、すすぎ物をする女性の真っ白いはぎに目がくらみ神通力を失ってしまったとか、
クコの話はつきません。
若葉を乾燥したクコ茶は、カフェンを含まない茶として常用されます。
動脈硬化や高血圧の人に向きます。葉にはベタイン、ルチン、ビタミンCなどが含まれています。
クコの芽や
けふ薄着せし妻の胸
細川加賀
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」223号(2004年7月5日発行)に掲載された記事です。
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