カタクリ
雪解けを待ちかねたように咲くカタクリには、清新の気配が漂い、群落に出会うと懐かしさを覚えます。筆者の子供の頃はいたるところで簡単にみられたものですが、宅地造成の乱開発がすすんで、カタクリの自生地が滅びつつあるのは残念です。
カタクリは漢字で片栗と書きます。ユリ科の球根植物で、葉の間に伸びた高さ十五センチ前後の花茎の頂に一花をつけます。六弁花の径は五センチほどで、満開のときは極端にそり返り、なかには背中のところで交差しているものもあります。この花の姿勢が、とても可憐で、紅紫色の花びらの基部近くに蜜腺がありますが、その上部にW字状の濃紫色の斑紋があります。蜜を求めて蝶が飛んでくるのを、よく見かけたものです。
カタクリはほかの花に比べると、地上に出ている部分の寿命が短い。花が散ると、わずか二ヶ月ほどで、地下の球根にデンプンをため込んで、解けるように消え、休眠生活に入ってしまいます。
この球根を掘ってつぶし、取り出したのが本物の片栗粉で、昔は大切な食糧でした。食糧のほか漢方では、熱湯で溶いて、胃腸の悪いとき、整腸剤にします。現在、市販の片栗粉は、ジャガイモが原料です。カタクリの葉は山菜のなかでは、やわらかくソフトな甘味があります。熱湯にさっとくぐらせる程度で食べられます。揚げ物、煮物、ひたし物、あえ物、汁の実などにいい。塩漬けや乾燥にしておいて、必要なときに使うと便利です。
群落を発見しても、根こそぎ掘らないで、つつましく天与の贈り物を末永くいとおしみたいと思います。
もののふの
八十をとめ等が汲みまがふ
寺井の上の堅香子の花
『万葉集』巻十九(大伴家持)
※堅香子=かたかご~カタクリの古名
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」230号(2005年2月5日発行)に掲載された記事です。
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