正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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クチナシ

     - クスリになる食べ物

クチナシは漢字で梔子と書きます。クチナシ属は世界の熱帯や亜熱帯に、約六〇種ありますが、日本産はクチナシ一種です。アカネ科には飲用、薬用、染料など有用植物が多く、代表的なものはコーヒーの樹。昔から黄色染料として利用されてきたクチナシは、いまでは歴史的なものとなりましたが、沢庵漬け強飯(こわめし…赤飯など)などの食品着色料として用いられたのは、江戸時代からのことです。現在でも菓子、金団(きんとん)などの食品や木具の染色などに利用されていますが、微々たるものです。また香脂はテルピネオール、酢酸ベンジン、アトラニール酸メチルなどで、高価な香水の原料にされています。

最近の漬物には、ほとんど人工着色料が使われています。クチナシは天然色素で無害です。しかし量産できないという欠点があります。色鮮やかな黄色い沢庵漬けは、みるからに食欲をそそるもので、愛好者も多いはず。自然食品が見直されている現在、クチナシの実の量産も考慮すべきではないでしょうか。

クチナシの乾果は煎剤として止血、利尿、鎮静、消炎などに内服します。実の成分はゲニピン、ゲニポサイド、およびその配糖体ゲンチオピサイドです。この白い花は肉質で厚く、香りもよいので、生のまま刺身のつまにしたり、手早くゆでて、酢の物や和え物にします。また花酒にしたり、天ぷらにして食べます。

串田孫一は『博物誌』の中で、次のように書いています。「白い花からどうしてこんなきれいな色が出るのかと思うように目立っている、それは、どこか遠い国の、ずっと昔の町に、ぽつんぽつんと立っていた街灯のように見える」。このクチナシの実が、街灯のように見えるというところが、なんともメルヘン的です。哲学者であり、画を描き詩をつくる人のみずみずしい感性に触れた想いがします。ヨーロッパやアメリカでは、クチナシは、ガールフレンドに贈る最初の花とされています。

暮れてなほ
くちなしの花見ゆるほど
素逝

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この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」232号(2005年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
福士 高光
株式会社ケルプ研究所 代表取締役会長

略歴
F・E・ヨガライフ協会会長。理学博士。F&Eシリーズ開発者。