ジュンサイ
ジュンサイは、スイレン科の多年生水草で、一族一種の植物で同類がなく、北海道から本州一帯の古い池沼に自生しています。道南の大沼公園では、その季節になると池に舟を浮かべ、茎を引き寄せて刈り取ります。大沼公園の小沼はジュンサイ沼として全国に知られています。
ジュンサイは日本や中国のほかに朝鮮、北アメリカ、オーストラリア、西アフリカなど、広く世界の温帯各地に分布していますが、食用にするのは日本と中国だけで、中国ではチュンといい、和名ジュンサイは、これに由来していますが、古くは「ぬなわ」また「根ぬなわ」と呼んで万葉以前からすでに食用とされていました。
食用にするのは、寒天状の粘質物に包まれた若芽と葉で、葉は小さく粘質物の多いものほど品質がよいとされています。熱湯をくぐらせた程度で酢の物、酢みそあえ、汁の実などにします。日本的な食べものの中でも、とりわけ枯淡な味で、酒のさかなとして年配の酒客に珍重されています
淡白で独特の風味が身上ですが、寒天状の粘質物の中に、胃腸や肝臓によく効き、強壮作用の成分が含まれています。市販品の瓶詰めは、一度湯がいているので、本来のジュンサイの味からは遠いように思います。
「ジュンサイや水を離れて水の味」という句がありますが、ジュンサイは味も香りもなく、淡白そのもの、水のような味わいですが、ジュンサイが珍重されるのは、むしろこの味のなさにあるのだろうと思います。ジュンサイを食べるのは、日本と中国だけであり、ただ季節だけを食べるものですから、この味覚は、ほかの外国人には到底わかるまいと思います。
朝より酒
生ジュンサイの箸に逃げ
石川桂郎
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」235号(2005年7月5日発行)に掲載された記事です。
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