タラノキ
棘(とげ)のことを古語でタラとかバラといっていたので、タラノキは棘の木ということになります。昔からタラの新芽は、山菜の王者とされ、ウドに似た独特の風味、ほろ苦さ、歯ごたえがあり、深みのある味わいが好まれてきました。
タラノキにはタランボ、タラッペ、タラッポなど、愛すべき方言がたくさんあります。北海道ではタランボの呼び名が一般的です。ただ棘が多いのと枝分かれが少ない木なのでトリトマラズの別名があります。北海道山菜誌(北大図書刊行会)によると「一度頂芽が摘まれると、また芽は出るには出るが、形も小さくなり、芽の勢いも弱くなる。これさえ取ってしまうようだと樹勢が衰え、しまいには枯れてしまうから、たくさんとってタラ腹食うのはやめたいものである。山間の農村での言い伝えによれば、タラの芽一つ摘みとることは、坊主四人の首を切るのに等しい罪悪だというのもこの辺のことをいったものであろう。」とあります。
ゆでてひたし物、あえ物、吸い物の種、煮物、糠漬けなどにします。また、そのまま焼いて田楽、つけ焼き、汁の実もいいものですが、いちばんうまいのは天ぷらで、くせのないまろやかなタラの芽の味が生きてきます。
タラノキの樹皮をはがして乾燥したのをタラノキ皮と呼び、タンニンのほか、コリン、プロトカテク酸、タラリンなどを含んでいます。これを煎じて服用すると糖尿病、腎臓病、胃腸病に効き、根は胃がんに薬効があるといわれています。同じウコギ科の植物であるチョウセンニンジンは万病に効くといわれ、野生の上等品には何百万円という値段がつくそうです。タラの芽は山菜ブームで、一般農家でも特産品として、栽培が増えています。
筆者の大阪の姪夫婦は自宅の小さな土地を利用してタランボを栽培し、結構楽しんでいるようです。近頃はこういう人たちが増えているそうです。
たらの芽の
とげだらけでも
喰われけり
一茶
日高 一
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」237号(2005年9月5日発行)に掲載された記事です。
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