ミツバ
ミツバはもともと「三葉芹」といわれていたものが簡単にちぢまって「三葉」という名前になったものです。拙宅の小さな庭の片隅で京ぶきと共生しているミツバも、吸い物、ひたし物、そえ物などに結構、重宝がられています。
ミツバは古くから日本の香りで、欧米人の好みには合いにくいかもしれません。色と香りが繊細で、食生活のなかで季節感を大切にしてきた日本人が、つつましく守り育てた野菜です。
店頭に多く出回っているのは、軟白した「切りミツバ」(もやしミツバとも呼ぶ)、水栽培で育てた「糸ミツバ」です。畑で栽培して根がついたまま店頭に並んでいるのは「根ミツバ」です。ミツバには、この三種類があリます。
北海道山菜誌(北海道大学図書刊行会)によると野菜と蔬菜を区別するのに、蔬菜は栽培されたもの、野菜は野生の草の中から集めてきたもの、とあるので、北海道のミツバは野菜ということになります。
山まで行かなくても、ちょっと湿り気のある原っぱにいくらでも見つけられます。栽培したものはすらっとしているのに対して、野のものはずんぐりむっくりしたタイプで、全体が地面に伏したようで、太い根茎からすぐに葉をつけています。
ミツバは日陰に生えるセリ科の多年草。日本列島、朝鮮半島、中国大陸や北アメリカの温帯地方に分布しています。栽培の歴史は比較的新しく、徳川中期ごろからといわれています。江戸初期の「百姓伝記」や「大和本草」「本朝食鑑」にも記載されていますが、漬け物(塩漬け)にしたり、葉を飯に入れて炊いたりしたこともあったようです。
ミツバには鉄、ビタミンB1、C、カロテン、カリウムなどが含まれていますので、貧血や疲労回復、肌荒れなどに有効です。また、ナトリウムの排泄を促すので高血圧や胃弱、活性酸素をおさえる働きをします。
夕風をかをらせ
みつば摘んでおり
宗像夕野火
日高 一
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」246号(2006年6月5日発行)に掲載された記事です。
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