わさび
ワサビは日本原産の植物ですが、今では英名でも[wasabi]と呼ばれて世界的にもわが国を代表する薬味となっています。
ワサビの旬は周年ですが、北海道から九州の涼しい山間の渓流に自生していますが、現在では各地で栽培される多年草です。特に秋から冬、根茎を掘り取り、水で洗った後すりおろして用います。
ワサビを「山葵」と表記するのは、「和名抄」に山葵(さんき)と和佐比(わさひ)とされ、「大和本草」には「其葉加茂葵(あおい)に似たり、其根形味生薑(しょうが)に似たり。故に山葵山薑の名あり」とあって、葉が葵に似ていることに由来します。
ワサビの根茎にはシニグリン、アリルイソチオシアネートなどの辛味成分や精油、タンパク質、炭水化物、ビタミンCなどが含まれ、香辛料として特有の辛味と香気などが食欲増進に利用されますが、防腐や殺菌力が強いので、そばの薬味や刺身のつまとしてなくてはならないものです。
ワサビは古い書物にも薬草として記述があります。室町時代にはすでに刺身の薬味として用いられていました。ワサビの辛味は「胃の消化を助け、魚毒を消す」といわれて、抗菌作用や食欲増進効果などが記されています。
私の田舎(日高三石)ではお年寄りがよく、ワサビをすりおろしたものを布に薄くのばして患部に張り、リウマチや神経痛、扁桃炎などに用いていましたが、刺激が強いので水で薄めるなど量を加減して使っていました。
ワサビ漬けとして食べると、健胃効果があるといわれ、花、葉、根にも同じような成分が含まれているので、地方の伝統野菜として重宝がられていました。
現在市販されている粉ワサビや練りワサビは、ヨーロッパ原産のセイヨウワサビ(ワサビダイコン)の根を粉末にして、葉緑素を混合した加工食品です。セイヨウワサビは、ワサビの代用として栽培されていますが、根茎が太くて大きく、シニグリンなどの辛味成分を含んでいますので、香辛料のほかに神経痛や筋肉痛などに使用されています。オカワサビは品種改良によって山林や畑で栽培できるようにしたワサビのことで、ハタケワサビともいいます。
ほろほろと
泣き合ふ尼や山葵漬
高浜虚子
西野次朗
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」454号(2023年10月5日発行)に掲載された記事です。
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