コブシ
コブシは日本特産の花木で北海道から九州まで、全国に分布します。北海道で見られるコブシは、花がやや大きく、いくらか赤みを帯びていて、葉も大きいので、変種としてキタコブシと呼ばれていますが、はっきりした区別はなさそうです。
コブシの和名の語源は拳で、蕾の形が似ているというのと、その果実に由来するという二つの説があります。実をかむと辛いせいか、江戸時代の「大和本草」などには、辛夷という字を当てた文献もありますが、これは誤用で、辛夷は本来はモクレンのことだそうです。
コブシは、一般には季節の花として、農村の生活、民俗の中にとけ込んでいます。地方によっては、コブシの咲くのを見て、苗代をつくったり、タネを播いたりしていました。いわば農事の指標木のような役割をしていたのだと思います。
山辛夷ぱらりと咲けば
田ごしらへ
飴山 実
コブシの枝を折ると香気があります。コブシはアイヌ名で、オマウクシニまたはオプケニというそうですが、前者は「いい香りを出す木」、後者は「放屁する木」の意味です。ずいぶん対照的な名前ですが、「いい香りを出す木」というと、悪魔が香りにひかれてやってくるおそれがあるため、伝染病が流行しているときなどには、「放屁する木」と呼んだそうです。そうはいいながらも、アイヌの人はこの皮を煎じてお茶がわりにしていました。
ことし五年生になる孫娘が誕生したときの記念に「ヒメコブシ」(幣辛夷/しでこぶし)を植えましたが、ずい分大きくなりました。樹形、枝ぶり、花、実どれをとっても楽しめる鑑賞木です。
漢方では、コブシのつぼみを包んでいる苞を採集し、乾燥したものを辛夷(しんい)といって、煎じて頭痛、瘡毒などに用いていますし、花も芳香があるので、香水の原料に使っています。
日高 一
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」254号(2007年2月5日発行)に掲載された記事です。
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