きのこ(茸)
きのこの方言はコケ(北陸)・ミミ(佐渡)・モタセ(東北)・ナバ(九州)など、いろいろありますが、古くはキノタケ(木茸)と呼んでいたようです。茸は菌茸とも書きます。人間は人間から遠いものを食べるとよいといわれますが、きのこは、人間から最も遠いものといえます。つまり生物は、アメーバから人間まで進化したのですが、きのこはアメーバの親類といってもいいでしょう。
私たちが健康のために食べてよいといわれるものは、動物と植物と菌類、つまりきのこです。きのこは有毒の鉱物質を人間の体内から排出する力を持っていますし、最近ではガンを抑える働きのあることも分かっています。そういう意味からもきのこは菌類の花といえます。きのことは、気の凝ったもの、気は元気、すなわち力・精力のことでもありますから、それが集まったものがきのこです。
きのこをタケといいますが、これはタケリ(牡陰)を略したもので、男性のシンボルににているのでタケリといい、略してタケとなったのです。また、きのこをクサビラと呼ぶことがありますが、奈良県の一部では、今でもクサビラといっています。草片(クサビラ)には、あおもの・野菜の意味もあります。また、獣肉もクサビラと呼ぶことがあります。(鶏肉を柏、馬肉を桜と呼ぶなど)
きのこにはさまざまな方言や俚諺がありますが、私は極めて単純に、きのこは、木に生えるものだから「木の子」と名づけられたもの、と解釈しています。
「とってきたキノコをかたっぱしから鍋へ放り込み、それをポン酢醤油で食べる。森の香りが響きあい、ひたひたと舌に押し寄せてくる。」(嵐山光三郎・頬っぺた落とし う、うまい)
世界でいちばん生産量が多い栽培きのこはマッシュルーム、第二位はシイタケ。日本人は、世界のなかでもきのこ好きの民族です。きのこの美味い晩秋、今夜はきのこ汁にしましょうか。
今しがた聞きし茸の
名は忘れ
上村 占魚
日高 一
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」263号(2007年11月5日発行)に掲載された記事です。
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