正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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にんにく(大蒜)

     - クスリになる食べ物

「古事記(中)」に日本武尊の詠歌として「みつみつし、久米の子等が粟生(あはふ)には、臭韮(かみら)ひともと」というのがあります。このカミラはにんにくのことだという説があります。古名はオオビルで、大型のネギ類という意味です。西アジア原産でユリ科の植物です。日本には中国から渡来しました。

漢名は葫(こ)・蒜(さん)・葷菜(ぐんさい)・麝香草(じゃこうそう)・莙蒿菜(くんこうさい)など。にんにくは太古・上古から用いられていたのですが、仏教が渡来してから修業者の戒律として、僧はこれを食べてはいけないと禁じられていたので隠して忍んで食べていたところから隠語で「忍辱(にんじゅく)」の字があてられていました。

紀元前三二〇〇~二七八〇年には、エジプトの第一・第二王朝の時代から玉葱とともににんにくが食用とされていたことが、墳墓の壁画から知られます。旧約聖書にモーゼに導かれてエジプトを後にしたイスラエル人が「憶ひ出るに我等エジプトにありし時は、魚、黄瓜(きうり)、水瓜、韮(リーキ)、青蒜(にんにく)などを心のままに食へり」とあります。

平安朝のころにはエチケットとして嫌われ方も相当なもので、「源氏物語」帚木(ホウキグサの別称)の雨夜の品定めにも「極熱の草薬」とあって、いかに薬用といえこれを食った女に接するより、鬼を抱いた方がよいとまで酷評されています。しかし、庶民の間では、古くから土用の入りににんにくを食べれば疫病をまぬかれると伝えられて、田舎では、よく軒先に吊るしてあったものです。ロシアには「にんにくは七つの病をいやす」という諺があります。

にんにくの「に」は「にほひ」(匂)、「にく」は、にくむ(嫌)を略したもので、ににくをにんにくと称したのです。にんにくと広く呼ばれるようになるのは応神天皇のころからです。

日高 一


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」268号(2008年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
福士 高光
株式会社ケルプ研究所 代表取締役会長

略歴
F・E・ヨガライフ協会会長。理学博士。F&Eシリーズ開発者。