ナメコ
ナメコは、東北や北海道などのブナやナラ、トチなどの広葉樹の枯れ木や切り株に群生します。最近は人工栽培の技術の発達によって、1年中食べられるようになりましたが、戦前はその地域だけに限られていました。栽培物に比べて天然物は晩秋の霜の降りるところに発生する習性があって色も濃く、軸が短いのが特徴です。
ナメコは、うまみや香りの成分が少なく、96%が水分で、ビタミンやミネラルなどの栄養価はあまり期待できませんが、独特のぬめりがあって、その歯ざわりが多くの人に好まれるようです。このぬめりの正体は、タンパク質を分解して吸収を高める働きをする食物繊維、ムチンです。ムチンには胃の粘膜を保護する働きがありますので、疲労しているときには、体にやさしい食べものです。また、アルコールを飲む前に食べれば、悪酔いを防いだり、肝臓への負担を減らしたりする効果もあります。
きのこ類にはコレステロールを下げる作用や制ガン作用が注目されています。しいたけやえのきに比べてやや少ないのですが、ナメコにも同様の効果が望めるとの結果も報告されています。生活習慣病予防には、心がけてとりたい食品の一つです。
ぬめりの成分は、数種類の多糖体の混合物ですが、このぬるぬるが疲れた胃をいたわる役割をしていますので、調理するときはくれぐれもぬめりを洗い流してしまわないように気をつけることが大切です。
ナメコは、一度ゆがいてから冷やすと、ぬめりがさらに多くなり、ツルリとした舌触りがより楽しめます。熱湯でさっとゆがいたナメコを大根おろしと和え、酢じょうゆで食べるおろし和えも人気の一品です。秋から冬が旬で、ぬめりが強く肉厚で傘の開かない小粒のものが上等とされています。生のままで日もちさせるのは難しいのですが、酒としょうゆでさっと煮て、容器で密閉すれば、2~3週間は保存できます。
※本記事に関して、ムチンという言葉は、動物性の粘性蛋白質についていわれたもので、学術的には、植物の粘液についてムチンというのは誤用という主旨の指摘をいただいています。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」171号(2000年3月6日発行)に掲載された記事です。
著者 |
|
略歴 |