正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第38回

     - 統合医療

もう一つがんの発生に関して重要な点は生活習慣です。
わたしは、がんというのは生活習慣病だと考えています。
では、具体的にどのような生活習慣ががんを導くのか、これを食事と運動に分けて考えてみます。

まず、食事ではどのようなものががんの発生につながるのか?
結論を先に言いますと、肉や脂肪に富んだ食事、塩分の取りすぎと野菜不足ということになります。
肉や脂肪に富んだ食事がなぜがんを発生させるのか?
これに関してはすでに第3回でお話ししましたので重複しますが、
とても大切なポイントですので再度解説します。
四つ足動物、即ち動物性タンパク質は大量に食べると小腸で分解されずに大腸にまで達し、
ここでウェルシュ菌のような悪玉腸内細菌によって
インドールやアミンといったがん原性の物質に変化します。
肉を含んだ脂肪の大量摂取により悪玉腸内細菌が増加します。
また、肉を含む脂肪に富んだ食物を摂取すると脂肪を分解するために胆汁の分泌が増加し、
その結果胆汁酸が大量に出されます。胆汁酸が変化(脱水素化)した二次胆汁酸は
大腸がんのプロモーター(プロモーターはがんを促進する物質のこと)であることが確認されています。

さらに、二次胆汁酸は代謝されて女性ホルモンに変化します。
女性ホルモンは乳腺細胞の増殖を促進するので、脂肪の摂りすぎは乳がんの発生率を増加させます。
塩分の取りすぎは人間がエネルギーとして使用するATPを産生するクエン酸回路がうまく回らなくなり
ATPが不足する結果、がんが発生しやすくなります。

また、塩分は胃の中に入ると胃粘膜を荒らします。その結果粘膜にピロリ菌が住み着きやすくなります。
ピロリ菌はみなさんご存じのとおり胃がんの原因細菌です。
日本は世界でも胃がんの多発国ですが、
疫学的にその原因として塩分の過剰摂取があると指摘されてきました。
そのメカニズムは過剰の塩分摂取によりピロリ菌が胃に住みやすくなるということだったわけです。
一方、野菜・果物には抗がん作用のある抗酸化物質である
ポリフェノール、フラボノイド、カロテノイド、
ビタミンC、クロロフィル、葉酸などが豊富に含まれています。
野菜不足はこれらの抗酸化物質が不足する原因となりますので、
前にお話ししたように体内細胞の酸化作用が増強し、細胞のがん化につながるのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」353号(2015年5月7日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士