正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第46回

     - 統合医療

次の法則は「ハーブとサプリメントの力を借りる」です。

がん治療に対する、現代西洋医学的治療と統合医療的治療の最大の違いは、前者ががん細胞を異物と考え徹底的に排除しようすることであるのに対して、統合医療では身体、心、魂(スピリチュアル)の状態をよい方向に保つことにあることです。後者は言い換えれば、がん細胞が体内で存在できないほど(或いは存在する意味がなくなるほど)体内環境を強化することであると言えます。

この違いをケリーは実に巧みな比喩の質問で説明しています。その質問とは、「カビの生えた地下室をきれいにするには、どうしたらいいか?」というものです。皆さんなら、さて、どうされるでしょうか?地下室全体にカビキラーを散布してカビを根こそぎにするでしょうか。この場合、カビは確かになくなるでしょう。しかし、カビが生えた根本原因(風通しの悪さ、日当たりが悪いなど)はそのままです。すると、時間がたてばカビは再度生えてきますね。カビが再度生えないようにするためにはどうしたらいいか、これは言うまでもなく地下室の風通しをよくしたり、除湿器で除湿したりすればカビは生えてこないわけです。つまり、カビキラーは抗がん剤です。抗がん剤で徹底的にがんを撲滅しても(或いは、そう思っても)、がんになった根本原因がそのままではがんはやがて再発します。したがって、地下室の風通しを良くするように、私たちの体内環境も改善しなければがんはなくならないのです。

このような体内環境の改善、強化にはハーブやサプリメントはおそらく有効なものです。これらにはまだ十分な抗がん作用のエビデンスはないものがほとんどですが、「がん細胞がエネルギーの流れが滞り、酸素や栄養素が欠乏して細菌やウィルスにあふれた体内環境の土壌に生じる」とすれば、これを健康的な環境に変えることができる有力なツールのひとつがハーブ、サプリメントと言えるでしょう。ただし、誤解してほしくないのは、単にハーブやサプリメントを服用していればがんが治るといった単純なものではないということです。その前に自分ががんになった根本原因をよく考え、その生活習慣を180度変える努力の上で、はじめてこれらは効果をあらわすのです。

それでは、どのようなハーブ、サプリメントを使用すればいいのか?これに関しても「直観」がものをいいます。ハーブ、サプリメンはネットで調べれば星の数ほど多種類がありますが、そのなかで本当にそれが自分にあっているのかは、自分の直観によって選択する必要があります。そして、ひとたび選択したら、それが本当に自分に効果があるのだと信じることが大切です。心の底からその効果を信じると、脳はスイッチオンするのです。つまり、脳はだまされるのです。これはどういうことかというと、例えば、パナソニック創業者で経営の神様といわれた松下幸之助は、常に「自分はついている人間だ」というのが口癖だったそうです。いつもそう言っていると脳細胞はどんなつらい状況でもスイッチが、ついている方向にオンされて、いつのまにかつきが自分に回ってくるように行動が促されるのです。人間は楽しいから笑顔になるだけではなく、笑顔でにこにこしていると楽しくなることがあるのも、同様に脳がだまされるからです。ですから、このハーブ、サプリメントは自分に効果があるのだと信じて使用すれば本当にその効果があらわれます。反対に半信半疑で使用しても期待する効果は出ないでしょう。

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この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」365号(2016年5月6日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士