統合医療とは何だろうか?最終回
- 統合医療
さて、この長い物語も最終回を迎えました。これまで53回にわたって統合医療とは何だろうかと、自問もしながら駄文を重ねてまいりましたが、あきれながらも見捨てることなく最後までお読みいただいた、「未来」の読者の皆様に感謝申し上げます。
こうして最終回を迎えて、今、統合医療とは何だろうかと改めて考えてみますと、わたしにはやはりケリー・ターナーの言葉が思い浮かぶのです。彼女はその著書、「がんが自然に治る生き方」の最後にこう言っています。「がんの寛解は、わたしたちの身体・心・魂の三位一体システムが病にどう反応するかにかかわってくる」と。しかし、これはなにもがんの治療にだけ限定したことではないと思います。
これまでもたびたび申し上げてきましたように、わたしたちの体と心は切り離せないのです。ギリシアの哲学者プラトンはすでにその事実を認識しておりました。彼は言います、「医療の犯した最大の過ちは、身体を見る医者と心を診る医者を分けてしまったことだ。身体と心は、分けられないのに。」と。心を無視して体を治そうとしてきたのが現代西洋医学でしょう。その西洋医学の大本山のアメリカの研究者から身体・心・魂の三位一体システムが病にどう反応するかが重要であるという提言があったことは誠に興味深いことです。わたしはケリーの著書を読んでいて、この人は東洋に生を受けた仏教者ではないかと感じることがしばしばありました。
結論を急ぎましょう。わたしが考える統合医療とは、身体、心にベースを置いて、魂のエネルギーを感じ取るということです。そのために、帯津三敬病院の帯津良一先生や日本ホリスティック医学協会の初代会長、藤波襄二先生がおっしゃる「人間を丸ごと観る」という視点が必要なのだと思われます。日本では、まだまだ統合医療が市民権を得ているとは思われませんが、近い将来、特にがんの医療において統合医療が必要であることが認識されることを期待して筆を措きます。
最後になりましたが、「未来」にこのような駄文を掲載することをお許しいただき、また、わたしのわがままで何回も休載したにもかかわらず原稿を辛抱強くお待ちいただいた、株式会社サッポロケルプの福士宗光様に心より御礼申し上げます。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」373号(2017年1月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |