統合医療とは何だろうか? 第27回
- 統合医療
免疫とは何か、これをこのシリーズで詳細に述べることは不可能です。
また、詳細に解説したとしても、生物学や基礎医学を学んでいなければ理解することは困難なテーマです。
そういう詳細な解説をおこなうのが本稿の目的ではありません。
体と心を健やかに保ち、毎日を生き生きと暮らす知恵として統合医療を活用するための解説を
おこなうことを本稿では目的にしています。
ですから、ここでの免疫のお話は皆さんの日常の生活に身近な話題を取り上げて、
健康に生きるヒントを提供するものであることをご理解ください。
さて、あらためて免疫とはなんだろうかということを考えてみましょう。
免疫とは〝疫を免れる〟と書きます。
疫とは人間における様々な病気の原因、すなわち、ウィルスや細菌といった外敵と考えるとよいでしょう。
つまり、免疫とはもともとこのような外敵から体を守る働きという意味だったのです。
しかし、最近ではそれ以外に、健康の維持(例えば病気からの回復やストレスに負けない心身を作ること、
さらにがんに対する抵抗力など)や新陳代謝を活発にして
機能低下や老化を防ぐことなども広い意味で免疫の働きと呼ばれています。
つまり、免疫は外敵から私たちの体を守り、同時に体と心を常に良い状態に保つ働きをしているのです。
この意味では免疫力とは自然治癒力の一種だと言えるでしょう。
この免疫力が欠如するとどんなことが起こるのでしょうか?
それはエイズという病気を考えていただくとよいかもしれません。
エイズウィルスは免疫機能に必要なCD4+T細胞というリンパ球などに感染し、
CD4+T細胞を破壊してしまい、免疫が作動しなくなります。
その結果どうなるかといいますと、まず、普通の健康人なら感染することのない弱毒菌に感染しやすくなり、
致命的なニューモシスチス肺炎などを起こします。
さらに、カポジ肉腫や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の発生頻度も高くなり、最終的には死に至ります。
これらの疾患が発生するのは、結局免疫が働かないために起こってくるわけです。
つまり、免疫が働かないと人は生きていくことができないのです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」333号(2013年9月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |