正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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あふれる感覚情報と処理する脳

 私たちの周りには様々な刺激が満ちあふれています。日々の生活では、目からは人や物が見え、耳からは音が、鼻からは匂い、口からは味、そして体からは触れられた刺激や体の動きや位置の刺激がひっきりなしに入り、脳にその情報が届けられます。けれども、私たちはこの刺激を全て情報として取り入れているわけではありません。自分に必要な情報だけを選択しています。これは抑制という機構が働き、生きていく上で混乱のないように脳がコントロールしているためです。もし、この機構が十分働かず、全ての刺激が情報として脳に入ってきたとするならば、脳は混乱し、生きていくことにも支障をきたすことになります。私たちは必要な情報のみを選択し取り入れ周囲の状況を知り、それにふさわしい動きを計画し実行していきます。また、その動きが間違った場合には、修正を加えていきます。

このように、感覚刺激からの情報をうまく処理していくために、脳の状態の大切なことがわかります。

脳が目覚めている状態を覚醒水準といいます。意識という言葉が使われることもあります。覚醒水準が興奮状態だと、周りの刺激の全てに反応してしまうことが起ります。逆に、覚醒水準が低いと、ボーッとすることになります。こんな時、私たちはどうするでしょう。刺激を調節することを無意識のうちにしています。たとえば、目をつぶって気持を落着かせようとしたり、背中をさすって興奮を抑えようとします。逆に目を覚まそうと冷たい風にあたったり、頬をペシペシ叩いたり、運動したりします。私たちは、薬物を飲まなくとも、脳の働きを調節することができるのです。その働きをするのが、感覚刺激です。感覚刺激は脳の栄養にもなっているのです。

次回は各々の感覚が脳にどんな働きをするのかをお話します。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」154号(1998年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。