バラ色の老後は幻想???
日本の人口は、二〇〇四年をピークに減少がすすんでいます。二〇〇五年の死亡者数は約一〇八万人でしたが、三十年後に死亡者数は一七〇万人に達するという人口推計があります。四十年後の死亡率は、終戦直後と変わらないほど高まると推定されてもいます。少子・高齢化、長寿化の時代に続くのは、大量死の時代といえるかもしれません。
人は誰もが必ず死を迎えます。この死に方が、恵まれた環境で、好きなことをしながら、ぽっくり逝けるとよいのですが、なかなかこれが難しい。たとえ長生きできたとしても、「ぽっくり」と死ねる人はほんの一握りのようです。医療の進歩で高齢化にはなりましたが、その一方で障害や認知症を持つ人が増え、多かれ少なかれ、医療や介護を受けることになりました。
そのため、医療費や介護保険などの破綻が予測され、既に国は増大する社会保障費を何とか抑制しようと躍起になっています。こんなことでは、安心して病気にもなれません。また、医師不足は地方の問題ではなくなっています。医師不足問題は都市部にも波及していますし、産科・小児科の問題だけでなく、全診療科が抱える問題です。今すぐ手を打たないと大変なことになります。
医療制度改革により、確かに在院日数短縮化が進んでいます。慢性期から終末期は確実に「在宅」への流れが作られてもいます。死を迎える場所が病院から「わが家」で迎える人が増えていくでしょう。しかし、ホスピスの代わりになるような、相談できる診療所はごくわずか。受け皿が整わないまま「わが家」で家族の抱える問題が大きくなりそうです。終末期の意思決定を考えなければなりそうです。
世はまさに健康ブーム。アンチエイジングや長寿礼賛に走っています。けれど、長寿は必ずしもバラ色ではないことも知っておかなくてはならないようです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」268号(2008年4月5日発行)に掲載された記事です。
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