正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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秋の気分

晴れた日、北海道大学のイチョウ並木を歩くのは、とても楽しいです。十三条門からの三八〇mの両側に、およそ七十本のイチョウの木が植えられています。石畳に落ちた真っ黄色の葉を、かさかさ踏んでのんびり歩くと幸せな気分になります。秋の楽しみのひとつです。

朝夕冷え込みが強くなるこの頃です。日の暮れるのが早くなったと感じ、もの悲しくなる、なんてことはありませんか。淋しい、気分が落ち込む、気が滅入る、というのはどうですか。こんなことは誰にでもあることだと思います。秋には人はメランコリーにするといわれています。けれど、この落ち込みが長く続き、仕事に差し支えるようであったら、要注意です。日照時間が短くなる秋から冬に限って現れるうつ状態、「冬季うつ病」というものがあるのです。

冬季うつ病は、一度なると毎年同じ時期に繰り返すことが多いようです。でも、春になると自然に治ってしまいます。また、男性よりも若い女性に多いそうです。このうつ病の特徴、他の「うつ病」と違うところは、気分は落ち込むのですが、よく食べ、よく眠り、よく太るというところにあります。特に、炭水化物や甘いものが食べたくなるというように、食欲のコントロールが難しくなるのです。そのため、病気だと気がつかないこともあるようです。芸術の秋、切ない音楽が心にしみることや、食欲の秋も、もしかすると、これで説明がつくかもしれません。冬に向かって、冬眠の準備をしているようでもあります。

この病気は、日照時間の短いところで多くみられるために、光を浴びることが効果的とされています。光を浴びないと心身の健康にも影響するので、光不足にならない工夫をすることです。朝は早めに起きてカーテンを開ける、太陽の光を浴びるために散歩することがよいよう。朝の光を浴びることは、冬季うつ病になった場合だけではなく、気持ちよく一日を過ごすためにも大事なことのようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」275号(2008年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。