正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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今、非常事態のとき

非常事態:大規模な災害や争乱、その他急を要する事態。

景気の悪化、金融不安、財政破綻、年金改ざん、食品偽装、広がる大麻汚染、飲酒運転、ひき逃げ事件などなど、底の見えない不祥事が多すぎると思いませんか。今、非常事態の時なのかもしれません。

昔はどうだったのか。平和な世の中だったのでしょうか。火災に地震、凶作に飢饉、疫病の流行など、人為的な災害も含めて考えても、今より穏やかであったとは思えません。「天災は忘れた頃にやってくる」ということわざがあるほどですから、そう頻繁ではなかったかもしれませんが、「備えあれば、憂いなし」の状態だったのでしょう。

このように、長く現在にまで語り伝えられている言葉の存在は、災難を忘れてしまいがちという事態に対する戒めとして必要だったのでしょう。

それにしても近年の災害の多さは何なのでしょう。それとも、災害が多いと感じるには何か理由があるのでしょうか。災害は人の意識に大きな変化をもたらすものです。時間、時の流れの認識を独特のものに変えてしまいます。たとえば、自然の脅威や破壊されてしまった生活環境など、信じられない現実を目の当たりにすると、時間を客観的に、あるがままに感じること、現在や未来を感じることが困難になります。辛い体験やショッキングな映像は脳裏に刻み込まれ、意識は現在・過去・未来のつながりを持たなくなるのです。あっという間の変化がもたらしたものを、認め、受けとめ、適応するには、物理的な時間だけでは不十分なのでしょう。理不尽な状況を自分なりに解釈し、そこに何かしらの意味を見いださなければ、辛い体験を反復することになってしまう。近頃、災害が多く感じる理由のひとつといえましょう。災害は忘れていなくてもやってくるのですよね。心しておきましょう。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」276号(2008年12月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。