正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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汗をかく

冷夏の今年の北海道、日照時間が少ない状況です。それでも、熱中症が増えているのは、湿度が高いためだそうです。湿度が高いことが、汗による放熱がうまくいかず、体温のコントロールができなくなってしまうようです。

さて、人間には生きるためのエネルギーが必要です。そのためには食べること。食物を栄養素に分解し、合成して、エネルギーを生み出しています。これを「代謝」といいます。代謝はエネルギーを生み出すので、大変な「熱」を生じます。実際、エネルギーのうち仕事に使われるのは三割程度で、残りはほとんど熱になります。熱が出ると人間の体温は上がります。すると、代謝が加速し、熱が出ます。低体温が肥満に繋がるのは、代謝が落ち、エネルギー消費されない結果です。

熱をこのまま貯めていては、人間は生きていけません。何かで冷まさなければならないわけです。汗をかいて放熱することが一番有効です。汗が水分として皮膚から蒸発するときに、気化熱を奪うために、体の熱を取り除くのです。熱中症の場合は、この放熱がうまくいかず起こりやすくなるのです。

汗腺は体全体にあるといわれています。しかし、汗腺がすべて活動しているわけではありません。実際に汗を流しているものは半分くらいです。日本人には、この働く汗腺が減ってきているといわれています。一年を通して、冷房や暖房設備の整った環境で過ごすと、汗腺が働く機会が少なく、機能しなくなるためです。これでは代謝しても、放熱してくれないと困った状態になります。良い汗をかかなければなりません。

良い汗をかくためには、汗腺を使わなければなりません。そのためには冷暖房に頼らずに、気温の変化を感じることです。季節を肌で感じて、汗をかくこと。体を動かすことは、汗腺を鍛えることにつながります。白湯を飲んで汗腺を刺激すること、半身浴も汗腺の機能を高めます。冷房の部屋に長くいる人は、二時間ごとに、熱めのお茶を飲むことも良いでしょう。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」284号(2009年8月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。