正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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ライフスタイルの変化

少々古い話です。女優の大原麗子さんが亡くなったとき、ひとりで誰にも看取られなかったこと、さらには死後数日たってからの発見だったことが話題となり、孤独死と騒がれました。華やかな彼女の雰囲気から、病気を持っての生活が想像できず、あるいは、自分自身と照らし合わせて、ひとりでの死を不幸な死のように取り上げられていました。私たちは死んだ人間の気持はわからないので、残された家族・友人の想いで、ひとりで亡くなることは「よろしくない死」と決めつけてしまうのかもしれません。

二〇〇七年に出版された上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』は、増版を続けているようです。この本で上野さんは、八十歳以上になると女性の八三%に配偶者がいない、という話から展開しています。結婚していようが、いまいが女性の多くは死ぬときはひとり。孤独死の何が悪い。「おひとりでお寂しいでしょう」は、余計なお世話。そんなこと考えずに、おひとりさまの老後を楽しもう、という本です。

けれど、五十歳時の未婚率は、男性が十六%、女性は七%と上昇しています。ライフスタイルは大きく変わっているのです。おひとりさまの老後は決して女性だけの問題ではなくなっているのです。死んだあとのことを考えておく、準備しておくということは、結局はどう生きるかということに繋がります。よく考えて、あらかじめ準備しておくことは、男性にも女性にも、家族がいようがおひとりさまであろうが、関係のないこと。生きていくために、大切なことといえるでしょう。

東京都監察医務院に勤める医師の話の中に、うなるほど納得するものがありました。それは、「ひとりで死ぬことには問題はない。孤独死などと、死んだ人の気持を勝手に想像する必要はない。ただ、あとの始末の問題を考えて、早く発見してもらうような手配だけはしておきなさい。」監察医、孤独死した遺体を検死する経験からの高齢者へのアドバイス。これはなるほどと思うのでした。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」286号(2009年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。