正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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人生をまとめる

過去は人生の多様な経験の貯蔵庫といえます。
老年期はこれまで生きてきた人生を再吟味し、
そしてそれとうまく折り合いをつけるよう過去を振り返る時でもあります。
この振り返り方には二つの方向があります。

ひとつは過去の出来事から、失敗や叶わなかった願いに注目し、
後悔や失望を集めてしまうやり方です。「あのときこうしていたら」、「あの人がいなければ・・・」と、
他者のせいや自分のあるべき姿でなかったせいにして、絶望を強めていくタイプです。
もうひとつは、過去を振り返った時、たとえ全てが成功でなくても、
自分の人生を生きるためにどのような選択をしたかを大切にするタイプです。
職業、結婚相手、子どもの育て方の選択など、自分なりの判断に誇りを持ち、
自分の能力への信頼や自尊心を得ることができます。誰のものでもない人生と受容できます。
もちろん前者よりも後者の方が望ましいには違いありませんが、
誰もがすぐに全ての過去の選択を認め、受け入れることはできません。
失望したり、自信を取り戻したりしながら整理していくのであり、
全体として過去を受容できると、その人の歴史は豊かなものとして捉えられることになりましょう。

年をとると過去をたびたび振り返り、同じ出来事を話すことが多くなるようです。
話をしたことを忘れているだけでなく、
その人自身が人生を豊かにする過去として位置づけようと努力しているためかもしれません。
このようにお年寄りの過去は、人生をまとめる上で重要な役割を果たすだけでなく、
後に続く者にとってもその意義は大きいものです。
それは私たちの歴史の一部でもあり、これを分かちあうことは
社会や人生に対する理解力を深めることになるからです。
過去は古く通用しないことでもなく、一度聞いてわかるものでもなく、
語る側にとっても聞く側にとっても大きな意味があるのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」220号(2004年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。