正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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適当に生きる

適当:ある状態・目的・要求などにうまくあうこと。ほどよくあてはまること。ふさわしいこと。また、そのさま。(日本国語大辞典第二版、小学館)

職業柄か、進路や人生の生き方・あり方について相談を受けることが多いです。たとえば、学生からは自分の能力にみあった将来の進路、職業や就職先について、社会に出た方たちには転職や結婚に関する悩みについての助言を求められます。私自身、まだまだ自分の生き方に悩みながらすすんでいるわけですから、ちょっと先を歩くものとしてのアドバイス程度しかできませんが。

ところで、このような悩み相談にあたっているときに、以前から少し気になっていたことがあります。自分の将来について、きわめて完全主義的で、確実に保証されないとなかなか決断できない人が増えてきたと感じるのです。失敗しないための仕事選び、自分の能力にあった職業とは何か、その道を選ぶことは本当に正しいのか。はたまた、老後は安心できるのか。人生の出来事は、予測できず、不確かで、あいまいなことが起こるのは当然のこと。そう簡単に予定通りに物事が進まないのが現実。もちろん、将来のことをしっかり考えて、的確に予測し、一定の目的に向かって日々努力することが、重要なことは言うまでもありません。けれど、約束が守られなかったり、明日のことが全く予想もできないといった社会は、彼らにとって不健全で住みにくいに違いありません。まして、老後を心配して進路を考えるのは、大変なことと思います。

ルールや約束が全く守られない社会は困りますが、一定の枠の中で人生に不可避的な不確実さやあいまいさを残し、その中から創意や活力が生まれてくることを期待する考え方が、もう少し重視されてもよいのではないだろうかと思います。

まさに、ほどよくあてはまる「適当」が良いところに納まるように、余裕を持って構えて自らの人生を選んで欲しいと願うのでした。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」294号(2010年6月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。