正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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頭の鍛え方

毎日何かを探したり、あれ?名前が出てこない。こんなことはよくあると思います。自分が認知症になってしまうのでは、と不安に思われる方も多いでしょう。若いころと比べて、脳の働きが衰えたなあと思うことも多いはず。

確かに年をとると脳の神経細胞が減るために、その分脳は縮みます。けれど、直接それが脳の衰えにつながるわけではありません。人間の脳は年をとっても、刺激を与えると活性化していくことがわかっています。

頭の働きとは、脳神経細胞同士をつないで情報が流れることです。ネットワークの中を情報が流れるわけですから、そのネットワークを増やすこと、あるいは、情報を大量に流れるようにする必要があります。たとえば、認知症予防に運動が効果的と言われているのはそのためです。

運動からは全身に刺激が入ります。この刺激が、脳神経細胞へ伝わるわけです。何かを覚えたり、特別な訓練を必要としません。

運動をより効果的にするには、有酸素運動が良いと言われています。運動には2つのタイプがあります。体内に酸素を取り込む量を基準としています。有酸素とは、呼吸をしながら身体を動かすタイプの運動です。たとえば、ウォーキングやジョギング、サイクリングや水泳などです。持久力が必要で、結果として、脳の前の方、前頭葉や前頭前野の機能を高めるようです。

これに対して、無酸素運動は、瞬発力を競ったり、重たいものを持ちあげるなどのタイプの運動です。腕立て伏せや筋トレ、100m走などがそれにあたります。これは認知症との関係は認められていません。

有酸素運動により、血流が良くなると神経細胞に栄養が行きわたるようです。これが脳の活性化となるわけです。長時間の運動を週に1度行うよりも、毎日30分行う方が有効なことがわかります。運動をする時間が取れない場合は、家事の際にゆっくり呼吸をしながら、身体全体を動かすようにすると、有酸素運動になります。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」328号(2013年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。