正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

*

飲酒問題を抱えていても年末年始を乗り切るために

かつてアルコール依存症といわれていたものが「アルコール使用障害」となりました。差別感や不快感を減らすとともに、わかりやすい表現にするための変更です。依存症というと精神的に弱い人がお酒に溺れるといった印象が強いものでした。実は誰もが陥る可能性がある病気ということで、使用障害となっています。

アルコール使用障害を抱える人や休肝日を必要とする人にとって、注意しなければならない季節です。新年会や忘年会、クリスマスパーティーと、アルコール摂取量が気になります。

飲みすぎの基準は、人によって異なりますので、具体的にはいえません。ですが、日本人男性の3人に1人以上は飲みすぎているといわれています。

アルコールが原因で死亡する人の数は世界で330万人以上とWHOの報告にあります。亡くなった人の20人に1人はアルコールが原因というわけです。結核やエイズなどを上回っています。

無粋なことは言いたくありませんが、一人ひとり自分で気をつけるしかありません。お酒の誘惑の強くなる中で、乗り切る対策を立てておくことも必要です。たとえば、ノンアルコール飲料を持っていったり、飲酒を断る理由を前もって考えておいたりすることです。

ひとりでいると抑うつ状態となり、お酒の誘惑が強くなるので、休暇中は誰かと一緒に過ごすことが重要です。ただし、誰と一緒にいるかを考えることも必要です。

適度な飲酒は健康によいといわれています。実際に飲みすぎたり、まったく飲まないよりも、適度に飲むことで死亡率は低くなるという調査結果もあります。血液中の善玉HDLコレステロールを増やし、動脈硬化を防ぐ効果があるとも考えられています。

しかし、アルコールの健康増進の効果を得られるのは、適量を飲んでいる場合に限られます。適度な飲酒、定期的に肝臓の検査を受ける、食事と一緒にゆっくりと、寝酒は控える、これだけでずいぶん変わります。変わりますが、なかなか難しいことと思います。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」348号(2014年12月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。