正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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運動の効果をあげるためには栄養が必要

高齢者の多くには低栄養のあることが明らかになってきました。低栄養とは、主にカロリーの不足、タンパク質の不足、いわゆる栄養失調です。いまどき栄養失調なんて・・・と思っていませんか。実は高齢になると、うまく食べられなくなったり、消化機能が落ちたりするために、栄養も水分も十分に取れなくなることが少なくないのです。

低栄養は外見も変えていきます。やせることだけではなく、肌荒れを起こしやすい、傷が治りにくい、抜け毛や白髪が増えるといったものです。また、風邪などの感染症にかかりやすい、握力が弱る、足や腹部がむくむなどあらわれます。

たんぱく質不足なので、血を作る材料不足のための「貧血」を起こしやすいし、血管を作る材料不足で「出血しやすい」身体になります。筋肉を作る材料が少ないので転倒しやすく、「骨折」しやすくなります。栄養不足で筋トレをすると、筋肉を分解してエネルギーを使いますので、かえって筋肉量は少なくなることもあるのです。低栄養はこのようにいろんな病気につながります。

高齢者は低栄養と脱水が同時に起こります。通常の食事から約1リットルの水分を取りますが、食事量が減ると当然水分摂取量が減ってしまうわけです。さらに、高齢になると、細胞内の水分、ためられる水分が若い頃より減ってしまいます。摂取水分の不足の影響、また、発熱や下痢などによる水分損失の影響を受けやすいのです。夏場の脱水症予防には、水も栄養も取ることが大事です。

低栄養を招く原因に、噛む力や飲み込む力の低下があります。たとえば、食べるスピードが遅くなり、食べる量が減る。よだれが多い。よくむせる。うがいがうまくできない。口の中に食べ物を長くためている。たんが絡みやすい。口からよくこぼす。声がかすれているなどは、その表れです。

年をとったら食事の量を減らす、というのは誤った考えです。噛みやすい飲み込みやすい工夫をして、食事を楽しむことです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」357号(2015年9月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。