正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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栄養問題

最近、「少し太っているほうが長生きできる。」とテレビの話題になることが多いです。特に、高齢の方の場合は「細い人」より「太い人」や「少し太い人」のほうが長生きという調査があります。

さらに、高齢者のコレステロール値と生存率との関係をみると、コレステロール値の「高い人」「やや高い人」「やや低い人」に比べて、「低い人」の生存率が低くなっていることがわかります。コレステロール値が高ければよいというわけではなく、病気によってはコレステロール値が低くなることもあるので、栄養の取り方が大切のようです。

高齢者の場合は、肥満やメタボよりも低栄養が生命予後に及ぼす危険性があるのです。

いまどきのライフステージでは、加齢などが原因で多くは70歳前後で体重は減少に変わっていきます。この体重減少に低栄養状態が加わると虚弱や筋肉量の減少するサルコペニアになる危険性が高くなります。そうすると、転倒・骨折、感染症などのリスクが高まっていくというわけです。

高齢者の体重減少・低栄養の原因は、1人暮らしや介護問題などの社会的要因、疾病ならびに臓器不全や摂食・嚥下障害、薬の副作用、加齢のための食欲低下、うつや認知機能障害などの精神・心理的要因、加えて、健康情報の誤解などが考えられています。

筋肉や水分量が減ってくる低栄養は、免疫力や体力の低下、気力がなくなるなど、良いことはありません。栄養の整った食事は元気の源です。身体の機能を維持する上で必要なのはエネルギーとなる糖質や脂質、血や肉となるたんぱく質です。どちらが不足しても、体力も抵抗力も落ちてしまいます。元気に動く筋力を保つには、良質のたんぱく質を多くとることが必要です。カルシウムをたくさんとっても、エネルギーやたんぱく質が不足した状態では有効に働きません。全体のバランスが大切です。多くの食品をとることがポイントです。そうすると、栄養バランスもとりやすくなります。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」366号(2016年6月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。