正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第47回

     - 統合医療

次の法則は「抑圧された感情を解き放つ」です。

抑圧された感情とは何でしょうか?ケリーは抑圧された感情を次のように定義しています。「抑圧された感情とは、良いものであれ、悪いものであれ、意識的であれ無意識的であれ、私たちが過去からひきずってきたすべての感情である。」この抑圧された感情は私たちの身体・心・魂のつながりを妨害します。ケリーがインタビューしたがんからの生還者たちは「病気とは、わたしたち人間の身体・心・魂のどこかのレベルで詰まっているものである」と考えていたといいます。では、何が「詰まる」のか?といえば、それは身体が毎日排出する毒物・細菌や古い細胞、がん細胞といったものです。身体・心・魂のつながりが妨害されると、これら「詰まったもの」は体内に蓄積されやがてがんを生み出すのです。このようにしてできたがんは、単にそれを物理的に取り除くだけではだめで、それが生じた原因と背景を是正しなければがんは再発するのです。

それでは抑圧された感情の性質をもう少し具体的に見ていきましょう。最初は「ストレス」です。以前述べましたが、ストレスは免疫システムを弱体化させます。がん細胞を察知し、排出させるのがこの免疫システムですから、ストレスが過度に存在するとがんが出来てしまうのです。逆にストレスを解放してあげるとNK細胞(ナチュラルキラー細胞。白血球の中のリンパ球の一種で、がん細胞を破壊する能力があります)が活性化されて、がん細胞を排除する力が強まります。もう一つ、私たちを抑圧する心の働きは「恐れ」です。恐れを抱いていると、エネルギーの場(そこには免疫システムも含まれます)が閉ざされてしまうとケリーは言います。つまり、恐れは免疫システムを破壊し、がんの発生や増殖を促すのです。身体が自己治癒するのは、恐れの感情が消え去ったときです。進行がんからの生還者は「恐怖の感情を手放すのは治癒の最善策だ」と異口同音に言っています。

では、身体・心・魂からこれらのストレスや恐れを解き放つにはどうしたらいいのでしょうか?ケリーは次に挙げる方法を提案しています。一つ目は「思考について日記に書き留める」ことです。その日に起きた感情と、それらを感じる直前に何を考えていたかを書き記すことで自分の思考回路がわかるのです。二つ目は「感情的になった瞬間のリストを作る」です。過去のあらゆる感情的な事象のリストを作り、そのリストを焼却するのです。これによって埋もれていた感情が滝のように押し流され、身体・心・魂が解放されます。そのほか、「許す練習をする」、「ストレス・マネジメントの講座を受講する」、「セラピストに会う」などを推奨していますが、ここでは割愛します。ご興味がある方は本書をお読みください。

いづれにしても大事なことは、どんな感情にも長く執着しないことです。感情は滝のように、あるいは海辺に打ち寄せる波のように体の中を流れていくことがいいのです。こうすることで、身体・心・魂は解放され、免疫システムがスイッチ・オンされるのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」366号(2016年6月6日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士