正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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老年期 現在、過去、未来

過去があって、現在があり、そして未来があります。長い時を生きてきたお年寄りにとって、過去はこれまでの人生の多様な経験が積み重なってきたものです。失敗やかなわなかった思いから、後悔や失望の思いを強くすることもあるでしょう。これとは逆に、過去を振り返ったとき、全てが成功ではなくても、自分の人生をいきるためにどう選択してきたかに満足を得ること、自分の進んできた道や結果に誇りを持ち、自分の能力を信頼し、自尊心を得ることもあります。例えば、結婚の相手、子どもの育て方、仕事の選択などを、「自分はこう生きた」、「そうして今がある」と思える心境であり、自分の人生をそのまま受け入れることができるというものです。もちろん、恨み辛みより、満足の方が望ましい晩年であることには間違いありません。しかし、だれもがすぐにすべての過去を認めて、受け入れられるわけではありません。失望したり、後悔したりの中で、自信を取り戻したり、理由づけして過去を整理していくのです。

過去をたびたび振り返り、同じ出来事を話すお年寄り。これは話したことを忘れているのではなく、人生を豊かにするための過去を位置づける努力をしている作業かもしれません。「あのころは良かった」とよく聞きます。「あのころ」は時計で計れる特定の時をさしているわけではないのかもしれません。あのころは「どのころかわからなくても」、大切なのは「あのころはよかった」という感じです。過去を聞いてくれる人の存在は、人生を肯定的に受け入れるためにも大切なことです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」180号(2000年12月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
北海道大学 大学院保健科学研究院 生活機能学分野 教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。