正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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丈夫で長生き、それとも・・・

「丈夫で長生き」が理想的ではありますが、
必ずしもみんながそうなるわけではありませんし、そう思うものでもないようです。
「たとえ、短命でも充実した人生を送りたい」と考える人もいるでしょうし、
また、「多少の障害はあっても、とにかく長生きしたい」という考え方もあります。
もちろん、どれが良いという問題ではありません。
それぞれの考え方にも限度があり、
客観的視点と主観的視点とを合わせて健康を考えることが必要のようです。

「健康とは」と、その意味について深く考えることは極めて哲学的なことといえます。
それは、人間が「いかに良く生きるか」ということと密接に関連しているからです。
健康を単に身体的側面からのみ捉えるのではなく、精神的・社会的側面から捉えるようになり、
「こころの健康」を扱うようになるとなおさらです。
「健康の意味」を考えた場合には、人生観、価値観の異なった個人間では
「健康観」にも相違があるのがあたりまえかもしれません。

日本では、毎年多くの人が自殺しています。
かつては、青年期と老年期にピークがありましたが、
最近は男性において成人期の自殺が増加してピークがもうひとつできています。
経済的な不況とも連動しているストレス状況の影響がうかがえます。
健康とは、人間の「こころ」と「からだ」の両方の機能が十分に働き、
周囲の環境と調和し、課されるひずみに対しても十分に反応して、
心身の状態を一定に維持できることといえます。
人間の機能は、加齢とか社会、文化等の受動的変化に対して、
その年齢、体力に見合って調和・調節でき、病気を予防でき、
豊かな生活活動や生産活動を営む資質を有しています。
人類の歴史は健康を保持・増進するための闘いの歴史でもあり、
文明とはいかに健康で快適な生活を確保するかの人間の知恵といえるかもしれません。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」224号(2004年8月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。