新しいヨーガは「病症指向」ではなく『健康指向』である
- ヨガ
前回の記事では「古典ヨーガ」と「ニューエイジ・ヨーガ」の違いに触れ、古典ヨーガは人の生の本質的根源を「苦」に置き、その苦からの解放の為に「生」を否定し、自然な感情や本能的欲望を抑圧・制御することが主題でしたが、他方ニューエイジ・ヨーガは「生」を肯定し「歓喜と調和、祝祭」を出発点とすることを話しました。
西洋医学でも東洋医学でも「病」や「苦」を治療することが目的です。その時我々の意識は病や苦に集中しておりこれを取り除こうとします。しかしこれを取り除いたとしても我々は健康や調和につながるのでしょうか。
20世紀にはじまる新しい文化潮流、意識改革は当時ニューエイジ・ムーブメントと言われ様々な社会・文化改革、新しい科学も生まれてきました。アインシュタインに発した現代物理学や量子物理学、現代生物学、またフロイト以降の精神分析や心理学もより新しく発展してきています。ヨーガに近いヒーリング、精神・心理療法、代替医療もより心と体の関連性を求めるホリスティックなものと発展し、現代ヨーガの理論的根拠となるものはネオ・ヴェーダーンタと言われています。
このような潮流から生まれた現代ヨーガは病、苦、症状に注意を集めるものではなく、生命の本質的根源、歓喜、調和、健康を志向するもので、その根源につながってゆくことが方向性です。我々の生命は姿形のない彼方からやってきてしばし肉体に留まり、肉体が滅びるとまた形のない根源へと分散し帰ってゆきます。この生命の生と死の儀式を日常のレベルに見出した古代インドはそれをプラーナーヤーマ、あるいはプラーナ・アグニ・ホートラ(生命の火の供犠)として形にし、我々に伝承していますが、現代ヒーリングではこのプラーナ(生命素)の流れをより科学的・医学的根拠に立ち「生命呼吸」として再発見しています。「生命呼吸」は「潜在力」を持った「静寂、静止」から起こり、流れとなって、我々の肉体に現れ、その流れは受精にはじまり死に終わります。
新しいヨーガはこの生命呼吸の根源と融合し、その流れと一体となることで、その流れを阻害しているものを除去し、治癒することはあくまで2次的なものととらえます。生命の根源、生命呼吸、根源的健康は我々の内にあり、それを自然治癒力や自己治癒力と呼んできました。
新しいヨーガは現代医学、生物学、心理学、精神・心理療法やヒーリングと調和一体となることにより我々によりクリヤーな新しいヴィジョンを指示しているように思われます。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」365号(2016年5月6日発行)に掲載された記事です。