ヨモギの話
- 鍼灸治療
5月になりますと、セリ・みつば・ヨモギ・うど・ふき・・・など山菜が勢揃いの季節となります。
すこしアクのあるこの時期の山菜は生長のためのエネルギーをうちに秘めています。
中国の晋の時代に書かれた「風土記」には5月5日(端午の節句)に野に出て薬草を摘み、
ヨモギや菖蒲を家の門にかけて邪気を払う習慣があったことが書かれています。
日本でもヨモギの若芽を摘んで草餅にしたり、茹でてお浸しにしたり、
葉を乾燥させたものをヨモギ茶として飲用したり、浴剤としたりと古くから生活の中に取り入れられています。
ヨモギの葉にはアデニン、シネオール、αツヨンなどの成分を含み
整腸、鎮静、血圧上昇を抑えるなどの薬効があります。
今はこのように成分の分析ができ効果の科学的根拠を得ることができますが、
いにしえの人たちは経験の積み重ねの中から知識として
次の世代に伝えてきたのだなぁと思いますと感慨深いものがあります。
さて、鍼灸師にとってヨモギといえばお灸に使うモグサの原材料です。
お灸に使用するモグサはヨモギの若葉を乾燥させ、
つき砕き、葉と葉の裏側にある綿毛を分離してつくるものです。
上質なモグサは270kgのヨモギから900gしか取れないそうです。
ご年輩の方の中には子どもの頃、親御さんが山野でヨモギの葉をあつめ、
モグサを手製にしてお灸に使っていたことをお話してくださる方もいらっしゃいます。
古代の中国ではお灸につかう原材料の植物も当初はいろいろな植物を使っていたそうです。
その中で薬効にすぐれたものとして長い年月のうちにヨモギが選択されてきました。
21世紀に暮らす私たちも、その知恵を役立たせていただいていることに不思議な気持ちになります。
みなさんも今年はヨモギの葉の裏側を眺めてみてください。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」293号(2010年5月6日発行)に掲載された記事です。
著者 ●鍼灸師 |
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