カツオ
カツオのことを「海のツーリスト」というように、カツオは熱帯から温帯の澄んだ潮流に沿って、
大きな群れをつくって回遊します。群れの規模は数十万匹といった途方もない巨大なものもあります。
日本近海には、春3月ごろに九州近海に姿を現わし、4月から5月にかけて紀州沖から千葉沖に、
7、8月には三陸から北海道という具合に日本列島に沿って北上します。
これはエサを求めて旅をしているわけだが、十分に栄養をつけ終わると、
9月のはじめには産卵のため、南の海へ帰って行きます。
江戸時代の初夏は、現在の5月ごろ、鎌倉沖でとれたカツオを
「目には青葉山ほととぎす初鰹(素堂)」とあるように、
江戸っ子たちはその到来を待ちかね、競って食べたものです。
旬の物は栄養価が高く、初物を食べると75日間寿命が延びると信じられていました。
カツオを素材とした加工食品というと、なんといってもカツオブシです。
最近はパックに入った物が多いが、本当は使うたびに削って食べたいもの。
削りたては空気に触れて酸化したり湿気を帯びていないので美味。
それもその筈で、蒸す、燻乾、カビ付けなどのプロセスを経て、
タンパク質を分解してアミノ酸やイノシン酸をつくりだし、
可溶性窒素化合物(タンパク質に不可欠の成分)を増加させ、
脂肪を減らした、文字どおり世界に誇る卓抜した日本の伝統食品であり、バイテク食品なのです。
カツオブシは、昆布と並んでダシの王様といわれるが、滋養があり、高カロリーの食品でもあります。
登山や、ヨットなどで太平洋を横断するときなどは、
万一の遭難や漂流に備えて1本のカツオブシが携行されるといいます。
1本のカツオブシだけで、約1ヶ月は生き延びられるからです。
エネルギー量は生の約2倍、タンパク質は3倍、濃縮された素晴らしい食品なのです。
またビタミンEやD、ヘモグロビンやミオグロビンなどの鉄成分も多いので、
更年期障害、貧血、動脈硬化、骨粗しょう症の予防に役立ち、女性の強い味方といえます。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」209号(2003年5月6日発行)に掲載された記事です。
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