野菜のあれこれ
平安時代の辞書『和名抄』(わみょうしょう)には野菜のうちで栽培したものを「園菜」、
野原から採集したものを「野菜」と記されています。
いま私たちの食卓に並ぶ一部の植物食品に対して「野菜」という言葉が出てくる最初の文献だと思います。
この時代に野菜を栽培していたことも分かります。
日本では、昔は「ナ」という言葉は「菜」であり、
また、おかずとしての「肴」(さかな)という意味でも使っていました。
野菜、それもナッパです。葉菜がおかずの代表だったことが分かります。
主食になるイモ類の葉、たとえばキャッサバやサツマイモ、サトイモの仲間のタローの葉、
ウリ類やマメ類の葉などは、現在でも大切な葉菜として、世界各地で利用されています。
近代になり都市への人口が集まり始まると、
商品としての野菜が必要になり、都市近郊での野菜の栽培が盛んになりました。
江戸時代に栽培されるようになった練馬ダイコンは有名ですが、
当時の農家の貴重な換金用の野菜の一つでもありました。
野草と山菜は、典型的なものはともかく、境目がはっきりしません。
たとえばギョウジャニンニクは暖かい地方では山菜ですが、北海道では野草です。
ゼンマイ、ワラビなどは山野にいくらでも生えているといった具合なので、
野草も山菜も一緒に扱っているところがほとんどです。
因みに、広辞苑によると「山菜は山に自生する野菜。ワラビ、ゼンマイなどの類。
野草は野に生えている草」とあります。
春の七草から始まってセリ、タンポポ、ヨモギ、ノビル、ツクシ、ヨメナ、ウド、
フキ、アザミ、イラクサ、カンゾウ、コゴミなど、数え上げたらきりがないほど、
野原や沢や林には食べられる野草や山菜がたくさんあります。
野生のものでは、木の芽も食べられます。
タラノメは各地の山野に自生しているのでよく知られています。
もっとも最近は栽培物が多くなりました。
ウコギ、クコ、クサギ、アケビなどの新芽も柔らかいうちに摘んで茹で、
必要なら水にさらします。タケノコも新芽を食べる野菜です。
山菜採りの季節ですが、クマに注意しましょう。
たらの芽の
とげだらけでも喰はれけり
一茶
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」424号(2021年4月5日発行)に掲載された記事です。
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