ウド
長い冬が終わる3月下旬ころ道南の野山は芽吹き始め、
山の緑は一カ月ほどかけて稚内や根室に広がっていきます。
北海道の開拓期は「食べられるものはなんでも食べた」(北海道の食・村本直人著)時代であり、
山菜は自然からの何よりの贈り物でした。ウドは農漁村をとわず広く利用されていた山菜です。
独活の大木という喩えがありますが、
これは「ウドの茎は木のように長くなるが、柔らかくて材としては使えない」ということから、
身体ばかり大きくて役に立たない人の喩えに用いられるようになったそうです。
しかし、春の軟白の若芽は香りも高く、古くから和え物に賞味されてきました。
江戸時代中期の『農業全書』には、当時すでに軟白して食べたことが書かれていて、
現在の「東京ウド」は江戸時代の後半から特産品として成り立っていたといわれています。
今日、市場に出回る食用のウドの多くは畑で軟白栽培されたものです。
東京を中心に関東各地で栽培されていますが、
中でも三鷹市、立川市などが多く、中国地方の大山ウドも有名です。
野生のウドの若芽は、自然の風味にあふれ、独特の苦味と香りがあり、山菜として美味です。
ウドは食べておいしく、また薬にもなる、まさに薬食同源の植物です。
原産は日本で各地の山野に自生するウコギ科の多年草です。
山ウドは収穫できる期間が短く、ごく限られた時期にしか採れませんが、いまが旬です。
平安時代中期の『和名抄』(わみょうしょう)には、
ウドの漢名を独活(どっかつ)とし、和名は豆知多良(つちたら)と書かれています。
江戸時代、新井白石は古語のツチタラとはウドの葉がタラノキに似ているからと記しています。
ウドの微量成分にアスパラギン酸というアミノ酸があります。
旨み成分の一種で、体内でタンパク質の材料になります。
アスパラギン酸の生理作用は、新陳代謝を高めて疲労を回復し、スタミナを増強します。
また、カルシウムやカリウムなどのミネラルを身体の隅々に運ぶ作用があります。
漢方では発汗・駆風(腸内のガスを出すこと)・鎮痛などの作用があるとし、
リウマチや浮腫・関節痛などに用いられます。
昼月や山独活を掌に匂はしめ
石田波郷
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」425号(2021年5月6日発行)に掲載された記事です。
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